双子でプロのピアニストと聞いたら、英才教育を受けてきたのかと思いきや、ピアノ連弾デュオ・兄ーズのふたりは音楽一家ではない家庭で育った兄弟。そして、8歳年下の弟は難病を患っています。彼らの努力と未来への意思と弟への愛、なかなか巡り会えないピュアな若者の視線がそこにはありました。(全2回中の2回)

ピアノ2台を買ってくれた「親に感謝」

── 双子の連弾ピアニスト、山下順一朗さんと宗一郎さんのユニット「兄ーズ」。大阪国際音楽コンクール連弾部門優勝など数々の賞を受賞し、高校2年生だった2024年にプロデビュー。難病の弟の影響で障がいを持つなど医療的ケアが必要な子ども向けに、小4のときからボランティアで演奏活動を行ってきました。ピアノに真剣に取り組み始めたのは、いつからですか?

 

順一朗さん:父が軽い気持ちで電子ピアノを買ってきたのがはじまりで、たまたま同じマンション内にピアノ教室があったため、2歳からリトミック、4歳からピアノを習い始めました。年長のときに「この子たちはどのくらいのレベルなんだろう?」と疑問に思った母がコンクール挑戦を勧めてくれました。コンクールは「予選→本選→全国」と、3段階にわかれていて、年長時にはふたりとも「本選」入選でした。

 

コンクールへの参加前は、自分たちは熱心に練習に自宅で取り組んでいたつもりでしたが、実際、同学年の他の子たちが演奏する姿を見て、「もっとやるべきことがあるんだ!」と強く感じました。厳しい世界に自分たちの身を置くことで、新たな扉が開いた感覚がしてワクワクしたんです。以来、家族で真剣に取り組み、毎年参加しています。

 

コンクールに挑むにつれ、「コンクールで使うピアノで練習するほうがいいのだろうか?」「ピアノが1台だけだと、双子ではバランスよく、同じ時間と内容で練習できない」といった葛藤も。結果、両親が清水の舞台から飛び降りる覚悟で、グランドピアノを2台、購入してくれました。

 

少しでも安いものをと中古品を探し、僕たちも一緒に何度もお店を回りました。家では2台のピアノが部屋を占領してしまい、父はからだ半分をピアノの下に入れて寝ていました。この環境を整えてくれた両親には感謝しかありませんし、子ども心にもしっかり練習しなければ、という思いが芽生えましたね。

 

兄ーズ
療育センターでボランティア演奏する小学4年生のころの2人

── ご両親の先見の明はすばらしいですね。それから、1日にどれくらい練習したのでしょうか?

 

宗一郎さん:小学3年生のころは、平日5時間、休日10時間くらい。外で遊ぶこともほとんどなく、ピアノに集中した生活でしたね。子どもだけでは進捗を管理できないので、両親と一緒に時間割とやるべき内容を決めて取り組みました。

 

それでもたまにサボって遊びに行きたくなって、バレないようにつじつまを合わせようとしたこともありましたが、ことごとく母にバレちゃって(笑)。ずっと部屋で練習しているはずなのに、遊びに行ってあわてて帰宅して汗だくのところを発見されたり…。母は何でもお見通しでした。