10代でピアニストデビューを果たした双子の連弾デュオ・兄ーズ。海外や全国ツアーなど活躍の場を広げています。その原動力になっているのが、生まれたときから人工呼吸器が欠かせない、難病を抱えた愛すべき弟の存在でした。(全2回中の1回)
難病の弟は「かわいそうでなく、かわいい」存在
── 双子のピアニスト、山下順一朗さんと宗一郎さんによるピアノ連弾デュオ「兄ーズ(あにーず)」。大阪国際音楽コンクール連弾部門優勝を経て、高校2年生だった2024年にプロデビューを果たし、今春にはふたりとも現役で大学の医学部に合格。ピアニストと医学生の両立にいたったのは、弟さんの存在が大きいそうですね。
宗一郎さん:僕たちが8歳のときに、弟が生まれました。弟は生まれた直後から難病のため入院が続きましたが、僕たちがまだ小学生だったこともあり、ほとんど面会できなかったんです。そのため、写真を眺めながら「早く家に帰ってきてほしい」「一緒に暮らしたい」と、ずっと願っていました。
順一朗さん:母の妊婦健診に一緒に連れて行ってもらい、エコー検査の動画を見せてもらったりしていたので、弟が生まれるのを本当に楽しみにしていました。弟に障がいがあっても、人工呼吸器や管につながれていても、かわいい弟であることに変わりありません。
── 難治性の重度のてんかんを患う弟さんは、人工呼吸器が欠かせず、24時間医療的ケアが必要だそうですね。弟さんが生まれ一緒に暮らすことで、家族の生活は大きく変化したと思います。
宗一郎さん:生まれて1年経過した退院のタイミングで、弟が安心して暮らせる環境を整えるために引っ越しをし、それにともない学校も転校しました。通っていた学校の友だちと離れるのは寂しく感じましたが、弟と一緒に暮らせるのでイヤだとは思いませんでした。新しい土地で新たな友だちに出会えるワクワク感もあり、僕らも机や棚を運んで、引っ越しを手伝った記憶があります。
──引っ越して新しい生活が始まり、転校先では、お母さんが弟さんを連れて授業参観にも行かれたそうですね。
順一朗さん:母と弟が、初めて僕たちの小学校の授業参観に来てくれたときのことが心に残っています。僕たちが「かわいいだろ!」と、弟をクラスメイトに紹介すると、みんなが「かわいい!」と頭をなでてくれたり、「この管は、なんでついているの?」と質問したり、興味を持って、自然と弟の周りに集まってきました。じつは、弟を連れて小学校に行くべきか母はとても迷ったそうですが、いい友だちに恵まれ、歓迎してもらえて本当によかったです。