楽しげなピアノの伴奏にのせて、当たり前なことを体操で表現する「あたりまえ体操」。いまではCOWCOWの代名詞というほど大ヒットしましたが、当初は「本当におもしろいのか?」と半信半疑から始まったそう。しかし、なぜかアジアでブームが巻き起こり── 。(全3回中の2回)

「あたりまえ体操」誕生も「まさかウケるとは…」

── 多田さんが伊勢丹の紙袋柄スーツで登場する漫才が印象的なCOWCOWですが、コント、ものまね、ギャグ、ピン芸人など幅広く活動しています。とくに、「あたりまえ体操」は国境を超えて大ヒットしましたが、その発想はどこから?

 

多田さん:2001年から始まった「M-1グランプリ」に挑戦してきたのですが、3年連続準決勝止まり。当時は「出場は結成10年までのコンビに限る」という制限があり、優勝を果たすことは叶いませんでした。

 

そこで、「キングオブコント」や「R-1グランプリ」にも挑戦するなかで、キングオブコントの準決勝と決勝進出者出演の全国ツアーに参加したんです。そのエンディングで僕が「あたりまえ説明書」というネタを披露したんです。「右足出して、左足出すと…歩くことができます」みたいな。それを見ていた相方の善し(よし)が、「これを音楽にのせて『あたりまえ体操』、みたいな感じにせえへんか?」と言い出しました。

 

完成した動画を見て、僕らのなかでは「これ、本当におもしろいんか?」「リズムよく当たり前のことをしてるだけやん」と、半信半疑でした。そこで、善しが家に持ち帰って自分の子どもたちに動画を見せると、これまでになく大ウケしたそうです。「もう1回見せて!」と何度も言って、笑い転げていたらしくて。翌日、僕に会うなり「あたりまえ体操、売れるから」と、言ってきました。

 

COWCOW
2代目と同じ柄のままフルオーダーメイド65万円をかけた「3代目」伊勢丹スーツ(左側が多田さん)

── 善しさんのお子さんたちが最初のお客さんだったんですね。あたりまえ体操は、その後、どのように世の中に広がっていったのですか?

 

多田さん:2011年にあたりまえ体操の映像を撮って、「S-1バトル(ソフトバンク主催のお笑い映像作品の大会)」に応募しました。日本一を決める大会自体は震災の影響で中止になりましたが、関係者経由でこの映像を見たテレビ番組『あらびき団』の方に声をかけてもらい、テレビで初めて公開しました。MCの東野幸治さんにほめていただき、何回か放送されるうちに、コアなお笑いファンの間で話題に。Twitter(現・X)で取り上げてくれた松坂大輔さんと僕がやりとりするなど、うれしい展開もありました。