「見ちゃダメ!」と母が子どもの手を引く──。スタージ・ウェーバー症候群という血管の奇形を患い、生まれながら右顔に大きなあざがある村田志穂さん(38)。子どものころから壮絶ないじめに遭っていましたが、苦難はその後も続きました。 

電車に乗れば石を投げられ…

村田志穂
就職先を探しながら、2006年5月にショベルカー゙の免許を取得した

── 生まれつき、スタージ・ウェーバー症候群という血管の奇形が見られる病気を患い、顔の右側に大きな赤っぽいあざがある村田さん。顔にあざがあることで、子どものころから壮絶ないじめに遭い不登校に。中学3年生になると家出をきっかけに暴走族に入りました。中学卒業後は定時制の高校に進学しますが、1年留年して5年間通い、20歳で高校を卒業。高校卒業と同時に暴走族も卒業しますが、いざ仕事を探しはじめると、あざが理由で職探しも難航したそうですね。

 

村田さん:いろいろな会社を受けましたが、面接に行っても履歴書を見てくれないとか、あからさまに「その顔ではウチではちょっと…」と帰されたことがありました。こんな仕事がしたい、といった希望はとくになかったのですが、接客業は全滅でしたし、店頭に立たず、裏方でお弁当を詰めるアルバイトも落ちました。以前、父が建設業の仕事をしていたことがあったので、私もユンボの資格を取って、建設会社の面接に行きましたが、女性だからとはじかれてしまったことも。でも、なかには採用してくれる建設会社があって働かせてもらったり、ある時期は清掃会社からOKをもらってなんとか働かせてもらったこともありました。

 

── 職探しでは苦労されたとのことですが、電車に乗ることや、街中に出ることすら大変だったとか。

 

村田さん:どこに行っても顔のあざを見られるし、電車に乗れば、知らない人から消しゴムのカスを投げられたり、唾をペッて吐かれたり、石ころが飛んできたこともありました。中学生のころから極力電車に乗らないようにしましたが、高校生のとき、どうしても地元の和歌山から大阪に行く用事があって、電車に乗る必要があったんです。電車に乗ると気持ちがしんどくなって息ができなくなるので、ひと駅乗っては降り、また次の電車でひと駅乗っては降りて、と繰り返しながら、どうにか大阪まで辿り着きました。

 

── かなりストレスが強そうですが、大人になった今はいかがですか?

 

村田さん:今でも電車はまったく乗りません。私は21歳で結婚して子どもを2人授かりました。子どもたちが小さいころ、子どもが電車に乗りたいと言ったので、頑張ってひと駅だけ子どもと乗ったことがあるんです。でもやっぱりしんどくて、帰りはタクシーで帰りました。

 

── だいぶツラそうです。街中ではいかがですか?

 

村田さん:今でもスーパーに行くと、知らない子どもが私の顔をジロジロ見ていることがあって、親御さんが「見ちゃダメだ」って言っているのがわかるんです。その光景が心苦しいのですが、今は慣れたというか、そこまで大きなダメージがなくなったような気もしていて。

 

子どもが私の顔を見て気持ち悪いって思うのは、ある意味いいことじゃないかと思うんです。子どもが親に「あの人変な顔」と言ったとしたら、「見ちゃダメ」ではなくて、「あの人は病気であざがあるんじゃないかな」と説明すれば、子どもは納得すると思います。説明せずに「見ちゃダメ」だといえば疑問が残るけど、親がひと言、説明するだけで世の中にはいろいろな人がいるんだなって理解もできるでしょうし。私の顔を道徳の教科書みたいに使ってくれたらいいなって思うんですけど。