映画に登場する悪者を肴に「新手の社会教育」をする夫



夫は映画を観ながら、さらっと「こういうの見ていて、気づかない?」と息子に語りかけます。そして、映画のなかでちょっと残念な散り方をする悪の組織の三下(※組織や集団における最も下っ端の者)を例に挙げて「学ぶ姿勢がない人間はどんな環境にいても成功しない」ことを伝えるだなんて、私には思いつきもしない所業です。
だから、いつなんどきでも「吸収しようとする姿勢」が大切で、勉強が苦手でもいい。学がないなりに、ひとつのことを追求し続けているのだってちゃんとした生き方だ──。夫の言葉は核心をついていました。

夫の言葉に「わかったよ、どこにいても頑張る!」と息子は素直に答えていましたが、この諭し方は、夫と息子の関係性があるからこそ響くやり方。無理に真似するのは諦めて、ここは夫を信頼して任せようと心に決めた出来事でした。

なんか、私に流れ弾が当たっていた気もしないでもないけれど…。

ややあって、夫が言う「学がないなりにひとつのことを追求し続けている人」って、勉強は苦手だけど絵だけは頑張っている私のこと?とようやく気づいたのでした。
PROFILE 横峰沙弥香さん
よこみね・さやか。イラストレーター。長崎県出身、1984年生まれ。2015年、第一子誕生を機に、長男「まめ(愛称)」との日常を絵日記にしてインスタグラムに投稿を開始する。2017年に長女「ゆめこ(愛称)」が誕生。著書に『まめ日記』(かんき出版)、『まめ日和』(光文社)、『ちんちんぼうずのだいぼうけん』(KADOKAWA)、電子書籍『へたのよこずき1・2』(主婦と生活社) などがある。