「娘がどうしたら幸福を感じるか」をずっと考えて

── 育児を始めてみて、いかがでしょうか?

 

塚本さん:「私は母親なんだ」という気持ちが持てました。強いパワーがわいてきて、育児を頑張れています。不思議なことに産前より体調がよくなったんですよ。でも、病気が治ったわけではなく、15分以上頭をあげているとフラフラしてしまいますし、体の痛みもだるさもあります。

 

同居する母は、ふだんから車いすを押してくれるなど、さまざまなフォローをしてくれています。出産したら、私に育児は難しいだろうと考えていたみたいで…。「育児はすべて自分が担当しよう」と思っていたそうです。でも、実際は母と私で半々くらい。授乳やおむつ替えは私がほぼ行っています。お風呂に入れるのは、私が娘の体を支えるのが難しいので、母にお願いしているんです。あとは、夜泣きしている娘をあやすのも私なのですが、睡眠不足になると症状が悪化してしまって…。あまりに眠れないときは、母が娘をほかの部屋に連れ出してくれています。

 

塚本明里
出産を経て退院したときの一枚

娘と向き合っていると、自分に体力がないことをつい忘れがちです。サポートをお願いできる人を見つけ、休養をとることを忘れてはいけないと思います。これは私が病気だからというだけではなく、ひとりで全部頑張ろうとしてしまう親御さんにも、当てはまるのではないかなとも感じます。

 

── 今後の目標はありますか?

 

塚本さん:子どもにとって自慢のママになりたいです。私が妊娠を公表したとき、ネットのコメントで「病気で車いすに乗っている母親って、子どもからしたらどんな存在なんだろう。恥ずかしいって思われないのかな?」みたいに言われたことがあるんです。私にはそういう視点は持ったことがなかったな、と感じて。

 

頭に浮かんだのは、プロ車いすランナーの廣道純さんの姿でした。以前一緒にラジオ番組を担当していたのですが、廣道さんはパラリンピックシドニー大会で銀メダル、アテネ大会でも銅メダルを獲得されています。その場にいるだけで、周囲がパッと明るくなるくらいパワフルで陽気な方。お子さんからすると、きっと自慢のパパに違いありません。

 

私はスポーツができるわけではないけれど、廣道さんのように何事も積極的に取り組んで、周囲に影響を与えられる人になりたいです。今、私は病気の啓もう活動や地域を盛り上げる活動などにも携わっています。そういう姿を見て、子どもが誇りに思ってくれたらうれしいです。娘には幸せになってもらいたいし、どうしたら彼女が幸福だと感じられる環境を作れるか、ずっと考えています。

 

 

難病を抱えながら、素敵なパートナーに恵まれ、結婚や出産を経験してきた塚本さん。実は結婚前にはモデル業などにも挑戦。地元の岐阜県で「歩ける車いすタレント」としても活動を始めます。さらには患者会を立ち上げ、病気の早期発見・早期治療につながる啓もう活動にも尽力しています。今後も講話やイベントなどで、病気のことを少しでも多くの人に知ってもらいたいと語ってくれました。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/塚本明里