3つの病気を抱え、満足に起き上がれない体調でありながら、岐阜県でローカルタレントとしても活動する塚本明里さん(35)。30歳になりマッチングアプリで婚活を始めたところ、運命の人に巡り会います。(全3回中の2回)
「そういえば私、結婚に憧れていたんだ!」
── 塚本さんは筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症、脳脊髄液減少症という難病だと診断されたそうですね。全身の痛み、めまい、起き上がれないほどの倦怠感など、さまざまな症状に悩まされたとのことですが、治療方法はないのでしょうか?
塚本さん:高校2年生のときに高熱を出してから、体調不良がずっと続いていました。起き上がれないほど具合が悪かったです。いろいろな医師にかかり、発症から1年半後、ようやく「筋痛性脳脊髄炎」と「線維筋痛症」と診断されました。発症から7年後には「脳脊髄液減少症」という病気とも診断されたんです。そのときの医師が言うには、最初に発症したのは脳脊髄液減少症だった可能性があるようです。ほかのふたつの病気は、後になって発症したのではないかとのことでした。
筋痛性脳脊髄炎は非常に重い倦怠感をはじめ、さまざまな不調が続く病気です。線維筋痛症は24時間全身に痛みが走る症状があります。脳脊髄液減少症では、私の場合、15分以上頭を持ち上げていると、めまいなどで具合が悪くなります。いずれも完治させる治療方法は確立されていません。ただ、発症してすぐに治療を始めた場合、寛解するケースはあるようです。
だるさや疲労感に対しては治療方法がないのですが、痛みをやわらげる治療はあります。そのひとつが麻酔を打つ方法です。麻酔が効かない体質の場合は効果を望むのが難しいらしいのですが、さいわいなことに私は麻酔が効く体質でした。一度の処置で体の40か所に麻酔注射を打つことで、1日3時間は痛みが軽減するようになったんです。以前は24時間、全身がずっと痛くてまともに眠ることができませんでした。それが、麻酔を打つと温泉に入ってリラックスしたときみたいな感覚になり、痛みがやわらぐんです。
最初は線維筋痛症と診断してくれた三重県にある病院まで往復4時間かけ、治療を受けていました。でも、「遠方から通院するのが大変だから地元で麻酔医を探しなさい」と先生が勧めてくれて、岐阜で治療を受けるようになりました。この治療に加え、脳脊髄液減少症に対する手術も行ったところ、治療の効果が少しずつ維持されるようになりました。麻酔治療を始めたころは週5日受けていたのが、現在は週2日ほどまで通院回数が減りました。痛みの少ない貴重な3時間を過ごしています。
── 1日3時間でも痛みが軽減される時間ができたのは、とてもうれしかったと思います。
塚本さん:痛みが軽減したおかげで、将来についても考える余裕ができて。30歳になったころ「そういえば私、子どものときから結婚に憧れていたんだ!」と、思い出したんです。とはいえ、結婚相談所とか合コンみたいな出会いの場に行くのは体調的に難しくて。マッチングアプリだったら家でもできるし、メッセージのやりとりだけで仲を深められると考えました。
でも、マッチングできたとして、病気のことを打ち明けるタイミングは難しかったです。お互いのことをよく知らないうちにすべてを伝えると、すぐにブロックされてしまったり、断られたりして…。それでもめげずに続けていたら、夫とマッチングしたんです。