56歳で24歳下の男性と再婚するが

── そのひと言が気持ちを切り替えるきっかけになったのですね。また、病気を経験する前にさかのぼりますが、ライフスタイルにも変化もあったそうですね。
岡野さん:私が56歳のときですね。私は28歳のときに結婚して、8年で離婚しました。その後はシングルマザーとして頑張ってきましたが、息子を大学に入れてホッとしたころ、無性に恋愛願望が生まれました。女性としてもう一度愛し愛され、幸せになりたい、と思ったんです。そんなころ、たまたま知り合いの紹介で、24歳年下の男性と出会い、つき合うことになりました。彼が「あつこさんは仕事をバリバリこなして、人脈もあってすごい」とほめてくれ、うれしかったことを覚えています。
交際となると年齢差もありますし、いろいろな人からうまくいくわけがないと言われましたが、36歳で離婚してから20年。ずっと仕事と子育てに頑張ってきたぶん、乙女心が開花、覚醒してしまったのです。もちろん、その年齢差ではさすがの私も再婚など考えられるはずもありませんでした。でも、一度きりの人生だからこそ、離婚で苦労し、息子に不憫な思いをさせまいと必死で働いてきたご褒美に、50代のステージを恋愛に生きてみようと思ったんです。
そして、交際から半年経ったころ、東日本大震災が起きました。この人と結婚したい。死んでは後悔すると思って56歳で息子に内緒で再婚。人生最高の幸せを味わいました。3年で離婚したときは悲しかったけれど、やはり24歳差のジェネレーションギャップや、価値観の違いは超えられませんでした。
当時は「離婚カウンセラーと」いう職業がそこそこ知れ渡っていたので、「離婚カウンセラーが離婚」とニュースでも取り上げられましたが、「人生の経験は多いほうがいい」と周りには言っていた気がします(笑)。
── そうだったのですね。現在の生活はいかがですか?
岡野さん:また素敵な出会いがあるといいなとは思いつつ、日々忙しくしています。大病もしましたし、健康に気をつけながら過ごしていけたら、と思っています。
取材・文/西尾英子 写真提供/岡野あつこ