「食事のたびに激痛に襲われて」いくつもの病院を受診するも「便秘」と言われ続けた離婚カウンセラーの岡野あつこさん。しかし、ある日緊急搬送された病院で、腸閉塞と大腸がんが発覚して── 。(全3回中の3回)
無事に大腸がんの手術が終わったものの

── 日本初の離婚カウンセラーとして、35年にわたり、夫婦問題に向き合い続けてきた岡野あつこさん。現在も精力的に活動を続けていらっしゃいますが、2016年には大腸がんを経験されています。どんなきっかけで発覚したのでしょうか。
岡野さん:62歳のある日、突然、強烈な吐きけと下痢に襲われたんです。5時間ほど七転八倒して、なんとか落ち着いたものの、それ以降、食事のたびに腹痛が起こるようになって。いくつか病院を回りましたが、どこでも「便秘ですね」と言われました。薬を飲んでもいっこうによくならず、体重もどんどん減っていく。有名な便秘外来のクリニックにも行き、食物繊維のサプリや腸内洗浄も試しましたが、改善しませんでした。
そんなとき、激痛で救急搬送され、そこではじめて腸閉塞とステージ3Aの大腸がんだと判明。医師からは「あと2年放置していたら命はなかった」と言われ、さすがに怖くなりましたね。
── 体が悲鳴をあげているのに、便秘と診断され続けていた。大腸がんとわかったときは驚かれたでしょうね。
岡野さん:そうでしたね。それまで大腸がん検査を受けてこなかったことを悔やみました。医師から「転移している可能性がある」と言われ、不安もありましたが、統計で5年生存率が70%くらいだと知って、「70%も助かるなら私は大丈夫だ」と、逆に安心したんです。しかも、信頼している占い師に主治医との相性を見てもらったら「相性バッチリ」と言われて。「それならこの先生に任せよう」と手術に踏みきることにしました。
── ポジティブな岡野さんらしい考え方ですね。手術まではどんなふうに過ごされたのでしょう。
岡野さん:手術前は腸内を空っぽにするために、1週間の絶飲食が必要でした。便をためる袋をぶら下げて生活するのですが、それがすごく恥ずかしくて、病院内の売店に行くのをためらっていたんです。そんな私を気づかって、看護師さんが袋を覆うカバーを紙で作ってくれて。その優しさが心にしみました。ところが、手術の直前になって、医師から「このままでは手術ができない」と言われて、いったん延期に。絶飲食の影響で栄養失調になっていたんです。このため、絶飲食を辞めて、栄養価の高いプリンを1日に5個くらい食べ続け、「しばらくプリンは見たくない」と思うくらい(笑)。栄養状態が回復し、2日後にようやく手術を受けることができました。
腫瘍の大きさは6.5センチ、診断はステージ3ではなく、2でした。さいわい転移はなく、抗がん剤治療も不要で、2週間ほどの入院を経て、日常生活に戻ることができたんです。ただ、ひとつショックだったことがあって…。私のミスで、がん保険がおりなかったことです。
── どういうことでしょう?
岡野さん:がんになる直前に、がん保険のプランを切り替えていたため、私が診断されたケースではこれまでかけてきた900万円の保険金がおりなかったんです。保険会社に落ち度はないし、身内に任せっぱなしで、ちゃんと確認しなかった私が悪いんですけどね。「損をした」と悔しがる私に、当時28歳だった息子がピシャリと言いました。「人任せにしたあんたが悪い。命が助かっただけでも感謝すべき。お金なんかより命が大事でしょ」と。その言葉にハッとさせられましたね。