離婚カウンセリングは受験勉強にも似ている

── 離婚問題は、非常にナーバスです。どんなふうに向き合っているのでしょう。
岡野さん:まず相談者さんのメンタルを整え、どうなりたいかという目的を確認します。そこから戦略を立てるんです。イメージとしては受験勉強と似ていますね。志望校ごとに傾向と対策があるように、夫のタイプごとに攻略法が違う。半年から1年、本気で向き合えば、結果がどうであれ、納得して前を向けるようになります。そのうえで、慰謝料や財産分与といった不利益が出ないように助言するのが、離婚カウンセラーの役割です。
── お仕事柄、トラブルに巻き込まれることもあるのでは?
岡野さん:そうですね。「妻をそそのかしている」とか「洗脳している」と誤解されることもあります。相談者に誠意を持って対応しても「裏があるんじゃないか」と疑われたり。でも、こちらも仕事ですから、相談者の代わりに徹底的に相手を疑い、あらゆる可能性を考えます。
ただ、意外に思われるかもしれませんが、私はもともと争いごとが苦手なタイプ。単純明快な人間なので、人を信じるほうが断然ラクなんです。そのせいで、ロマンス詐欺に引っかかったり、お金を貸して返ってこなかったり。これまでの被害額を合わせると、1億円は超えていると思います。
でも、失敗も全部、経験として糧にしてきました。私は運がいいと思っているので、すべて「なにかのネタになる」と割りきっているところはありますね(笑)。
── 自分の運を信じる気持ちが前に進む原動力なんでしょうか。失礼ながら、見習いたいような、マネしたら危ないような(笑)。ちなみに最近、仏門に入られたとうかがいました。本当ですか?
岡野さん:本当です。コロナ禍を経て、あらためて宗教観や哲学が大事だと思うようになり、僧侶となるための出家の儀式を受けました。私は今年で71歳。縁あって福島のお寺を引き継ぐことになったので、いずれは、そこで悩める人たちの相談にのったり、支援活動をしたいと考えているんです。人生の最後は、社会への恩返しをしたいですね。
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離婚カウンセラーとして活躍するなか、62歳のときに腸閉塞と大腸がんを患った岡野さん。しかもがん保険のプランを切り替えたばかりだったため、900万円の保険金が降りなかったそう。「損をした」と悔しがる岡野さんでしたが、「命が助かっただけでも感謝すべき」という息子の言葉にハッとさせられたと言います。「終わったことは振り返らない」がモットーという岡野さん。波乱万丈な人生ですが、71歳になっても常に前向きに、今を生きています。
取材・文/西尾英子 写真提供/岡野あつこ