最近「子育ての答え合わせ」のように思うこと

── 光代さんが子育てで大事にしたことはありますか?

 

間さん:あいさつや感謝、謝罪がきちんとできるよう教えました。「おはよう」「ありがとう」とか「ごめんなさい」。まずはそういう基本的な常識を教えるのが親の務めだと思いました。学校に行って先生に教わるのは学問です。日常の常識的なことは家庭で親が教えないといけないと思うんです。

 

あとは「謝れるほうが勝ち」という考え方です。なんか謝ることを「負け」みたいにとらえてる人っているじゃないですか。そうじゃないんだよと。きちんと謝れる人が偉いんだと。謝られて気分を害する人っていませんし、先に「ごめんね」って言ったら、腹が立っていても、それ以上にはなりません。自分が悪いと思ったら先に謝ったほうが勝ちなんだということを伝えました。

 

あとは、記念日とかお誕生日は大事にすることです。お誕生日っていうのはその人を産んだ親にも感謝しようって。だから、寛平さんの誕生日には、間の父と母に「ありがとう、この人と出会えたのはお母さんが産んでくれたからです」と言ってきました。子どもからしたら「勝手に産んだんでしょ」と思われるかもしれませんが、娘と息子は自分の誕生日には「産んでくれてありがとう」って言ってくれます。

 

── 親としてはうれしい言葉ですね。

 

間さん:本当に親って子どもが健康で笑顔で幸せでいるのがいちばんうれしいんです。それが私にとって何よりも幸せなことです。だから子どもたちが人間ドックに行ってくれると親孝行してくれていると感じます。ふたりとも受けに行くと必ず連絡をくれるんです。「大丈夫でした。何も問題ありませんでした。健康な体に産んでくれてありがとう」って。あぁ、今も話しながら涙が出てしまいましたけど、親にとってこれ以上のことはないですよ。自分自身の体のことも大事にしてくれているって本当にうれしいですね。

 

私はすでに、母と寛平さんの両親の3人とも見送らせていただいたんですが、最期にその3人ともが「ありがとう」って言ってくれまして。「いやいや、私がありがとうです」って思うところなんですが、後悔することがない関係でいれたこと、人生の最後に感謝してもらえる関係をまっとうできたことはよかったなと。

 

親子って何を教えるとか、どういう教育をしたとかじゃないなと思うんです。たとえば、私が大事にしてきたことや親にしてきたことを、うちの娘と息子が見て、自然と学んでくれた気がします。うちの母が亡くなるときも娘はずっと来てくれましたし、慎太郎はテレビ電話で「おばあちゃん、がんばってよ!」って話しかけてくれて、母はそれを聞きながら本当に安らかに亡くなっていきました。子どもが大人になって、こんな風に育ってくれた姿に私自身が納得できていることが大事だなと。最近、答え合わせのように、そう思うんです。

 

 

さまざまな困難を共に乗り越えながら、2人の子どもを育て上げてきた間さん夫婦。長年夫婦をしていると小さいことでも積み重なって、ストレスを抱えることはあるそう。それでも、光代さんにとって寛平さんは「私自身」と語るほど、一心同体のような感覚があると言います。あえて言葉で表すとしたら、寛平さんは光代さんの「宝者」なんだそうです。


取材・文/加藤文惠 写真提供/間 光代 撮影(間 寛平さん分)/伊藤和幸