さらに6000万円の借金を背負う大事件が

── 借金返済の日々のなか、のちに裁判にもなった「アメマバッチ」のトラブルが起きました。関西テレビ『今夜はねむれナイト』で生まれた寛平さんのキャラクター「アメママン」のバッジを10万個制作し、約6000万円の借金を抱えることになったそうですね。バッジを製作した会社から費用の不払いで訴えられて裁判沙汰となった事件でしたが、寛平さんは「これが当たれば、借金返済ができる」というお考えでのことだったようですね。

 

間さん:当初はそんなバッジを製作していることなど、私は全然知らなかったんですよ。「寛平ちゃん、これで借金もすぐ返せるで!」みたいなことを誘いかけて来る人がいて、それを真に受けてしまったんだと思うんですけど。本人は当時、これを当てることで、抱えていた借金3000万円を返そうとしていたようです。借金を少しでも早く減らして、私を楽にさせたかったんだと思います。

 

普通に考えたら、バッチは原価に見合っていないつくりですし、うまくいくわけないと思うところなんでしょうけど、寛平さんは自分が言い出したらもう聞かない。やると言ったらやりたいという性格なんです。事後報告でしたが、私はその性格をわかっているので「あなたが気がすむなら」って感じでしたね。それで、さらにどんどん借金ができるわ、バッチがどんどん家に運ばれてくるわ、みたいなことになりました(笑)。

 

── 裁判では裁判官に「アメマとは何ですか?」と聞かれて、「『ア~メマァ』です」と答えて、再び意味を問われると「『ア~メマァ』です」と真剣に答えた寛平さんのやり取りが法廷内を爆笑させたという伝説が残っていますよね。なんだか憎めないお人柄というのがわかる気がします。とはいえ、10万個というのはかなりの数ですよね、家に積まれた在庫を見ると怒りたくなりそうですが。

 

間さん:はじめ、家に持ち帰ると私にバレると思ったらしく、わざわざどこか外に倉庫を借りて預けていたみたいですね。寛平さんが「早く借金を返さないといけない」「(私に)迷惑かけまい」と思ってくれたんだろうなーと…思いつつも、在庫の山を見たらね、そら腹は立ちますよ?立ちますけどね、私への優しさがそうさせたと思わないと仕方ないですよね(笑)。

 

── 借金返済のときは光代さんも金融業者のところに足を運ばれて返済してきたそうですね。

 

間さん:金融業者なんですけど、いわゆる事務所に返済に行くわけです。当時、赤ちゃんだった娘を抱っこして行きましたね。古いビルの外階段があって、室内には書などが飾ってあって。怖い雰囲気のお部屋でした。入ると「あんた嫁はんか?」と言われたので「はい、ご迷惑かけておりました」と怯えながら言ったのを覚えています。

 

それで私はちょっとでも返済額が減るようにと思って「借金の利子がすごいので、そのぶん私をここで働かせてくれませんか?」って言ったんです。そうお願いしながら、抱いていた赤ちゃんの足をちょっとつねったんですよ。当たり前ですけど、赤ちゃんがギャンギャン泣きますよね。それで「うるさい!」って状況をつくったら、その様子を見かねて「もうええわ、ええわ、利子は堪忍したるわ。帰り」という展開になって。あんがい、そういう情がある方が多いというか、何件かその作戦で乗りきりました。娘にはかわいそうなことしたなと思いますけど。いま、学校の先生をしている娘はめちゃくちゃノリがいい子で、その話を聞いて大笑いしてくれてるので救われますけど、そんな修羅場もくぐってきましたね。

 

時間はかかりましたが、その後、子どもが小さいうちに無事に借金も完済し、ようやく新しいスタートを切れました。でも、人生って本当に想定外のいろんなことが起きるものなんですよ(笑)。

 

 

結婚するや、多額の借金を返済していくこととなった間光代さん。ようやく完済し家計がプラスに転じたころ、阪神淡路大震災で被災。普段は東京にいる寛平さんがたまたま自宅にいたので家族全員で助け合うことができたものの、家は全壊したそうです。次から次へと苦境が押し寄せるなか、それでも常に前向きだった光代さん。「逆境が起きたとき、どう心を切り替えたのですか?」と聞くと、「起きたことは仕方がない。何かあったら解決しないといけない。シンプルに、そういうことなんです」と教えてくれました。


取材・文/加藤文惠 写真提供/間 光代 撮影(間 寛平さん分)/伊藤和幸