デリケートゾーンは女性のバロメーター

── なぜフェムテックに注目したのですか。

 

小林さん:2017年に開発を始めた当時は、フェムテックという言葉も知られておらず、デリケートゾーンという言葉を使ったらびっくりされてしまうような状況でした。でも、女性が自分で自分の体を守れるようにとの思いを込めて、着目したのがデリケートゾーンのケアでした。今はだいぶ浸透してきたなと実感しています。

 

国家公務員時代にカンジタ症を繰り返していたのですが、その原因は免疫の低下やストレスで、デリケートゾーンの菌のバランスが崩れて、かゆみやかぶれなどの不調となって現れていたと後から知りました。デリケートゾーンが女性の心と体のバロメーターになっていることに気づいてから、同世代で同じ悩みを抱える女性のため、福島の農家さんのためにと思って商品作りを始めました。ところが、ふたを開けてみると更年期を迎えた女性のニーズが多いこともわかって。女性ホルモンが減ってデリケートゾーンが乾燥しがちになるので、今まで履いていた下着に違和感が出るようになったとか、自転車に乗ると擦れて痛いというトラブルがある方からもお買い求めいただいています。

 

小林味愛さんと福島の農家さん
福島の特産品、あんぽ柿の製造過程を見学する小林さん(写真右)

── 起業後の体調はいかがですか。

 

小林さん:今はとっても健康です。実はあれだけ心身に不調があったのに当時は自分の体調がそこまで悪いとは思っていなかったんです。起業して、体調がいい状態を保てたときに初めて「今まで体調がよくなかったんだ」と気づけました。日々に追われていると、自分の状態を客観的に振り返る時間はあまりありません。毎晩お風呂に入るときに数秒でもいいので、「無理をしていないかな」「不調はないかな」と自問することで心身の変化に気づくきっかけになってほしいですね。女性が自分や大切な人を守りながら、生き生きと過ごせる社会になってほしいと思っています。

 

 

起業後、住民票を移して福島に移住した小林さん。事業が広がるにつれ「福島の外に市場を作らなくては」と思い始め、現在は東京と福島の2拠点生活を送っています。子育てへのプレッシャーから結婚後も子どもを望んでいなかったそうですが、その思いを変えたのは福島で5人のお子さんがいる農家さんとの出会いだったそうです。現在3人のお子さんと暮らす小林さんは、「子どもたちの未来は、周りの環境で何かを諦めてほしくない」と語り、働くこと以外にも人生の幸せを見出してほしいと話していました。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/小林味愛