義母が抱いた葛藤と原さんへの思いを知って 

── お義母さんにも葛藤があったのですね。

 

原さん:親として当然の気持ちだと思いました。義母は明るく朗らかな人柄で、私のことをとてもかわいがってくれ、今ではなんでも話せる間柄です。でもそんな思いを抱えていたことは一度も聞いたことがありませんでした。子どもを持てないことを理解し、家族として温かく受け入れてくれたのは事実です。しかし、お義母さんなりに葛藤や不安を乗り越えてくれたのだと知り、胸が熱くなりました。手放しで「いいよ、いいよ」と簡単に受け入れられるものではなかったはずです。だからこそ、息子を思う母の気持ちに胸を打たれました。

 

── それぞれがいろんな思いを乗り越えながら家族になっていったのですね。

 

原さん:そう思います。夫やご両親との絆が、より深く尊いものに感じられます。今こうして笑い話として語れることが幸せです。

 

気づけば私も51歳。この先、人生がどこへ向かうのか、まだはっきりとはわかりませんが、これだけは言えるんです。私が一生を終えるとき、彼と結婚できたこと、そして彼のご両親に家族として迎え入れてもらったことは、本当に幸運だったと思うんです。夫と出会い、夫婦になれたことは、私の人生でいちばんの幸運です。つまずきの多い道のりだったけれど、これだけは本当によかったと、胸を張って言えますね。

 

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2度のがんを経験した原さん。年上で子どもが産めない女性に話を聞きに行ったり、婦人科系のがんを患った人が集う「よつばの会」を運営するなど前向きに活動されています。今は後遺症と向き合いながら、自分ができることを進めていると語りました。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/原千晶