夫が相談もなく「無職」になり、毎日のように趣味に没頭し遊びに出かけて行ったとしたら…?将来への不安やイライラを感じそうな場面ですが、松本伊代さんはまさかの「歓迎ムード」だったそうです。(全3回中の1回)
芸能界から夫が遠ざかった10年に…

── 90年代には数々のバラエティ番組に出演し、テレビで見ない日はないほどだったヒロミさん。ところが2004年ごろから姿を見かけなくなり、本格的に復帰するまでには約10年を要しました。休業当時、ヒロミさんから松本さんに相談はあったのでしょうか?
松本さん:何でも事後報告するタイプなので、相談のようなものはなかったです。ただ「このレギュラー番組はもう終わるんだ」とか、そういうお話はちょっとしていました。
──「芸能界を干された」という噂まで流れました。当時ヒロミさんとは、ほかにどんなお話をされていたのでしょうか?
松本さん:「今までみたいな立場のお仕事ではなくても、ほかのかたちで番組に出させてもらうのもいいんじゃない?」と、私が生意気にもアドバイスをしたことがあったんですが、ヒロミさんは「そうだね」ぐらいの反応で、それ以上のことを話すことはありませんでした。
── そんなヒロミさんに当時、どんなふうに接していたんですか?
松本さん:私としては無理に深掘りせずに様子を見るスタンスでした。でも当時はヒロミさんが芸能界を本格的に休むとは思ってなくて。まさか10年というスパンになるとは思っていませんでした(笑)。
ワンオペから一転、家庭にヒロミがいる日常に
── 休んでいた当時のヒロミさんの様子はどんな感じだったのでしょうか?
松本さん:たくさんある趣味に興じていました。トレーニングをしたり、トライアスロンに行ったり、よくわからないけど、日々お出かけになられていました(笑)。あとは、お友達と会う時間が当時は多かったですね。芸能界のお友達もそうですが、実業家のお友達ともたくさん会っているようでした。
── パートナーが仕事を休むというと、収入のバランスが一時的に変わることもあったと思います。不安や焦りはなかったですか?
松本さん:実はあんまりなくて。「まぁ、どうにか生きていけるでしょう」と思っていました。いざとなったら「家族で日本中を回って、営業でもしますか!」というような感じでした。
── 松本さんがそのスタンスなら、ヒロミさんも心強かったでしょうね。
松本さん:逆に当時の私の気持ちとしては、ヒロミさんが家にいてくれることのほうがうれしかったんです。それまでは本当に家にいなかったので、子育てをやってくれることがありがたくて。
── 当時は松本さんが、ほとんどひとりで子育てや家のことを担っていたんですか?
松本さん:ヒロミさんのお母さんがお手伝いに来てくださることもありましたが、基本的にはワンオペです。忙しすぎて、子どもとヒロミさんだけでどこかへ行ったということは、ほとんどありませんでした。
── ご家族で過ごす時間もかなり限られていたんですね。
松本さん:たとえば家族旅行に行ったとしてもヒロミさんだけ後から合流するのが普通でしたし、子どもの運動会も「この日ですよ」と事前に言っていたのに仕事で来られなくて、ケンカになったこともありました。
── ヒロミさんが芸能界を休んだことで、「普通の家庭」を実感することが増えたのではないでしょうか?
松本さん:そうですね。私自身も、そういう感覚を取り戻せた気がします。ヒロミさんは家にいる時間が増えて、ゴミ出しをしてくれたり、家のことを手伝ってくれるようになったりして、すごく新鮮でした。
── それもあって趣味に出かけるヒロミさんを責めるような気持ちがいっさいなかったんですね。
松本さん:はい。「今日はどこに遊びに行くの?」みたいな感じだったかな。家にいる時間がたくさん増えると、逆に、外に出かけてくれるのもうれしいな、と思っていたのもあります。
── それはいわゆる「亭主元気で留守がいい」というような感覚ですか?
松本さん:「私が楽をしたいから」というよりは、家にいると2人でずっとテレビを見ているので、どこかに出かける日があるのもいいなと思ったんです。