妊娠・出産が必ずしも引退に繋がる訳じゃないから

── トライアスロン選手としても活躍されていますが、今後はどのようなスタンスで競技を続けていきたいと考えていますか。

 

佐藤さん:パリ五輪を最後に競技からは退こうと当初は思っていました。結局、出場は叶わなかったんですが、28年ロサンゼルス五輪を目指して競技を続けたいと考えるようになって。

 

競技を続けている間は結婚生活との両立をイメージすることは難しかったんです。28年には夫は37歳になりますし、きっと子どもも欲しいでしょう。いくら好きでも、その気持ちだけで一緒にいるのは難しいかもしれないと、結婚前に悩みました。だから「一緒にいたいし好きだけど、やりたいことができてしまった。だからどうするかはあなたが決めて」と夫には率直に伝えたんです。その返事は「結婚だけはして欲しい」でした。

 

それまでは両立することが想像できませんでしたが、そう言われたことで結婚に踏みきることができたんです。20~30代にかけては結婚、妊娠、出産と女性ならではのライフイベントが目白押しですが、そのあたりは今もいろいろ考えることが多いですね。

 

── いずれは旦那さんの地元・岩手に戻ることも考えているんですか。

 

佐藤さん:いずれは子どもを欲しいと思っています。ですが、来年5月にアジア大会の選考会が開催されるので、まずは今の環境でストイックに競技を追求したいと考えています。その先はロス五輪を目指して突き進みたいです。だけど、いつかは彼の地元に戻ることも視野に入れ、意識するようになりました。

 

彼の地元・岩手で地域の方々と交流しながら、トップカテゴリーではなくても競技が続けられたらと考えることもあります。トライアスロンの女性選手で出産後復帰されている方はいるんですが、オリンピックを目指すエリート選手にはいないので、最近はそういったことも選択肢として考え始めています。

 

── 日本ではまだ限られていますが、海外では出産後に第一線に戻って活躍している選手も多いですからね。

 

佐藤さん:昨年、強化選手に入って国立科学スポーツセンターを使用できるようになり、産後の競技復帰を目指すアスリートや子育て中のアスリートや指導者を対象としたサポートがあることを知りました。そういった支援の存在は考え方に少し変化をもたらしていますね。夫もあと何年、現役選手としてプレーできるかわかりませんが、現役中に子どもが産まれて自分のプレーする姿を見せられればうれしいでしょうし、そう考えると必ずしも妊娠、出産が必ずしも引退という選択肢につながらないのかなとも思っています。

 

取材・文/石井宏美 写真提供/佐藤佳子