複数の医師に「よく生きてますね」と言われ
── よかったです。
福島さん:でも、血圧はいったん下がったのですが、その後、38歳のときに肝機能障害になりました。奥さんの実家でご飯を食べているとき、目を開けたまま目の前が真っ暗になってしまったんです。奥さんが慌てて病院に連れていってくれました。検査をしたら、肝機能の指標のひとつである「ガンマ・ジーティーピー」の検査値が、基準値の3倍以上だったんです。病院で「よく生きてますね」と言われました。
── 大丈夫だったんですか!?
福島さん:2週間ほど入院しましたが、診断は「胆石による肝機能障害」でした。胆嚢に石が詰まって胆汁が出なくなっていたんです。食生活が主な原因だったと思います。当時は先輩に連れて行ってもらったり、打ち上げなどでほぼ毎日、夕食後にラーメンや餃子、チャーハンを食べていました。お酒も毎日飲んでいましたね。飲み始めると止まらないタイプで、ジョッキ5杯くらいは普通に飲んでいました。
── 痛風にもなられてますよね。
福島さん:はい。痛風にもなりました。痛風の痛みは想像を絶する痛みで「風が吹いても痛い」とよく言われますが、実際は風が吹かなくても痛いんです。全身を竹やりで刺されているような痛みで、1日中脂汗が出て、のたうち回るほど苦しみました。強力な痛み止めの座薬があるんですが、痛みのレベルが10だとすると、それを使っても9.5くらいにしかならないんです。使用したのはかなり高い鎮痛効果がある薬なのに、ほとんど意味がない状態でした。
痛風は一生つきあっていく病気

── 今は落ち着いていますか?
福島さん:今はだいぶ落ち着いていますが、ムズムズするときや痛むときがあります。マックス10の痛みを経験しているので、焼肉を食べ過ぎた翌日などに体がムズムズして「そろそろ痛くなるな...」とわかるんです。そういうときは、濃い緑茶を大量に飲んだり、食生活を元に戻したりして対策を立てています。血圧もガンマ・ジーティーピーの数値もかなり下がったのですが、尿酸値だけはなかなか下がらないですね。痛風は一生つき合っていく病気だと思っています。
── 病気も続いて大変でしたね。
福島さん:そうですね、当時はお金もないうえに病気が重なって大変でした。給料日に家族で「すき家」に行ったんですが、その月の給料がものすごく少なくて。牛丼を頼んだんですけど、僕だけ味噌汁をつけてしまったんですよ。そしたら奥さんに「お金がないのに、なんで味噌汁なんか頼むの?」ってめちゃくちゃ怒られて。「給料日だからいいだろ!」って僕も言い返して、ケンカになってしまいました。
── 奥さんの言っていることもわかりますね。
福島さん:そうしたら、お会計のときに店員さんが「お会計済んでますよ」って言うんです。「えっ?」って聞いたら「さっき横に座っていた方が払ってくれました」と。トラックに乗り込もうとしている男性を指さしたんです。慌てて「ありがとうございました!」と、そのトラックの運転手さんに頭を下げました。
── 一般の方がごちそうしてくださったんですね。
福島さん:しかも、家族全員分おごってもらったんです。ありがたい気持ちでいっぱいでしたけど、夫婦ゲンカの一部始終を見られて、一般の方に心配されてごちそうしてもらったと思うと恥ずかしかったですね。奥さんには「味噌汁頼んでよかったじゃん!」って言いましたけど(笑)。でも、それくらいお金がない時期に、さらに体調不良も次々と重なって大変でした。
…
肝機能障害、痛風と重い病気が続いた福島さん。診察のたびに医師から「このままでは命に関わりますよ」と言われ、健康のために治療や生活改善を本格的に始めました。そのひとつとして始めたのが柔術。そのおもしろさにのめり込んだ福島さんは、現在では国際大会で優勝を果たすほどの腕前に。今の目標は2026年に行われる『IBJJF ブラジル柔術選手権』での優勝だそうです。
取材・文/大夏えい 写真提供/福島善成