長い節約生活で、買い物が下手になってしまった

福島善成
モノマネで大ブレイクを果たした

── その後、40歳でモノマネでブレイクされてからは、生活は変わりましたか?

 

福島さん:40歳のとき、船越英一郎さんや貴乃花親方のモノマネでCMが3本決まったり、映画の試写会でプレゼンターとして呼ばれる機会も増えたりして、お給料が一気に増えたんです。その年は、プレゼンターの仕事が芸能界で僕がいちばん多かったんですよ。

 

── ご家族の反応はどうでしたか?

 

福島さん:奥さんはすごく喜んでくれました。僕もうれしくて「服でも何でも好きなもの買っていいよ」って言ってたんですけど、貧乏生活が長すぎたせいか、買い物が下手になっていたみたいです。「作業着か古着しか、緊張して買えない」って言ってました。でも、そのころから家族旅行にも毎年、行けるようになって、子どもたちの行きたいところや少しいいところに連れて行ったり、レアな体験もさせたりできるようになりました。子どもたちも喜んでいて、少しは恩返しができたかなと思います。

夫婦にしかわからない夫婦の歴史

── 奥さんも喜びましたよね。

 

福島さん:奥さんは肝が据わっていて、僕より強くてたくましいと思います。普通の女性には耐えられないような生活を、よく続けてくれていたなと思います。普通だったら、20回くらい離婚されていたと思いますよ。

 

「こんなに貧乏なのに、どうして平気なの?」と奥さんに聞いたことがあるんです。そうしたら「1人目が生まれたときに、この子を育てあげよう。そして、あなたと添い遂げようと誓った」って言っていました。その言葉を聞いたときは、本当にありがたいと思いました。ずっと貧乏だったのに、支え続けてくれたことに感謝しています。

 

── ステキなエピソードですね。

 

福島さん:ただ、だからといって僕たち夫婦は、いつもべったりしている感じではないし、もちろんケンカもします。文句もたくさん言われますし。でも、それがうちの家族の形なんだと思います。僕の両親も、僕から見たらめちゃくちゃ文句を言い合ってますけど、40年間小さい布団で一緒に寝てますからね(笑)。

 

夫婦にはその夫婦だけの形とか、それまで積み上げてきたものがあって、外からはわからない歴史みたいなものがあるんだと、最近思います。

 

 

一生添い遂げようと決意した奥さんの強い思いが支えとなり、大変な生活のなかでも家族4人で楽しく過ごしていたことがうかがえます。しかし、そんなささやかな暮らしの中で、30代後半に差しかかると福島さんは突然多くの病気に見舞われます。血圧が240を超えて、緊急病院で検査を受けることに。高血圧、肝機能障害、痛風と数々の病気に見舞われますが、それが柔術を始めるきっかけに。現在では、国際大会で優勝を果たすほど大活躍。人生、何が転機となるかわかりませんね。

 

取材・文/大夏えい 写真提供/福島善成