寝ている間に母に髪の毛を切られた衝撃

現在は講演会などで全国を飛び回っている内村さん

── ところで、内村さんは褒めて伸ばす子育てをされてきたそうですが、内村さん自身が子どものころも褒めて伸ばされてきたのでしょうか?

 

内村さん:私が子どものころは、親によく叱られました。私には兄と弟がいますが、兄は優秀でしたし、弟も親から叱られている姿を見たことがなかったですね。でも、私はしょっちゅう叱られていて、何かにつけてほかのお嬢さんと比べられて嫌な思いもしました。

 

── どんなことで叱られていたのでしょうか?

 

内村さん:時間を守らなかった、宿題をしなかったとか、たしかに親に叱られるようなことをしていたんですけど…。母親に対しては厳しいというより、怖かった印象ですね。たとえば、私は子どものころから長い髪の毛が好きで、今もおさげやポニーテールをよくしているんですね。でも母は、当時は女の子はおかっぱのほうが清潔感があっていいと思っていて、母と娘で好みが違ったんです。

 

ある晩のこと。私は9歳のころからバレエをやっていましたが、練習後に疲れて寝ていたら、その間に母が私の髪の毛を勝手に切ってしまったんです。何も気づかず、朝起きたらびっくり!耳たぶのラインで髪の毛がカットされ、後ろは刈り上げになっているんです!もう泣きじゃくって母に訴えましたが、相手にされませんでした。私が起きていたら髪の毛を切るのを嫌がるだろうから、寝ている間に切ったと思うんですけど、それにしてもですよ。

 

── かなり衝撃的な出来事かと…。

 

内村さん:驚きますよね。その後、なぜか小学4年生くらいから伸ばしていいことになりましたが、衝撃が強くて今でも覚えています。今はそんな母も90歳を過ぎたし、私も母に対して怒りはありません。ただ、子どものころは自分が結婚して子どもが生まれたら、子どもの意見を尊重しながら、優しく育てようと思いましたね。

 

いっぽう、子どもへの愛情が強すぎるゆえ、航平から「応援禁止令」が出たこともあったんですけど…。

 

── 内村さんの熱狂的な応援は当時話題になりました。いつ、どのように航平さんから禁令令が出されたのでしょうか?

 

内村さん:航平が大学生になったあたりでしょうか。航平と娘の春日にはいつも大きな声援を送っていましたが、航平が大学生になったある日、航平と電話で話をしているときに「もう応援に来ないでくれ」と突然、言われたんです。ショックでした。でも、薄々は気づいていたんですよ。試合会場で客席から「航平!」と叫んでも視線をかわされるし、「あれ?」と思うことが何度か続いていたので。反対に娘の春日は応援に来てほしいタイプだったのできょうだいでも違ったんですけど。

 

航平に言われた後は、航平に許可を取って応援に行きました。しばらくは派手な応援を控えたし、親と子どもの距離感についても見直しました。ただ、オリンピックだけはどうしても我慢できず、さすがに熱がこもって応援してしまいましたが…。

 

── 航平さんは2022年に現役を引退されました。現在も定期的に家族で集合しているそうですね。

 

内村さん:家族が集まったときは私の手料理を振る舞います。私はもともと料理が好きなんですけど、家族が揃ったときはさらにはりきって作りますよ。また、家族でカステラにハマっているので、全国でお取り寄せもしながらおいしくいただいています。

 

── 改めて、子育てを振り返っていかがですか?

 

内村さん:いっさい悔いはないですね。基本的に後悔するならやってみよう!と思っているので、「あのときああしておけばよかった」ということがないんですよ。また、航平は体操で結果を残しましたが、親としてみれば、それ以上に航平も娘の春日も今まで元気に生きてくれた。それだけで私はとても感謝しています。

 

取材・文/松永怜 写真提供/内村周子