「僕はどうしてかゆいんだ!」と訴えてきて

── ちなみに航平さんは、メディアでは偏食で野菜嫌いと言われることがありますが、母親からみていかがですか?
内村さん:航平は子どものころから肉も野菜もしっかり食べていました。高校生になって寮生活になった後はずっと家を出ているので、もしかしたら自分の好きなものしか食べなくなったのかもしれませんが、今も家族で集まって食事をするときは、好き嫌いもなく食べていますよ。
── 航平さんの野菜嫌いのイメージに対して、ご本人はどう思っているんですかね?
内村さん:本人は昔から人が言うことは気にしない性格なので、いちいちそうとも違うとも言わなかったんじゃないかな。あと、偏食というより食が細い。量は食べないですね。子どものころは朝昼晩と3食食べていましたが、今は1日1食程度の日もあるみたいですけど。
── そうだったのですね。食事管理以外では、保湿クリームを常に塗っていたとのことですが、かゆみに関してはコントロールできていましたか?
内村さん:難しかったですね。肌への摩擦が少ない洋服を着せたり、汗をかいたらすぐタオルで拭いていたりはしたと思いますが、やっぱりかゆみがすごくていつもポリポリかいていました。子どものころは「僕はどうしてこんなにかゆいんだ!」と私に訴えてきたときもあります。
実は私も娘の春日もアトピーなんです。春日はそこまでひどくなかったのですが、私は重度だったので、そんな航平の気持ちもわかるつもりです。航平はかゆみで肌や頭をかきむしり、目の周りやおでこから血が出ていたし、髪の毛も抜けていました。学校で同級生から「こうちゃんはどうしてそんな肌なの?」と聞かれたときは、かわいそうだったなと思いました。
── 大人になった今は肌がきれいに見えますが、途中で何か変化があったのでしょうか?
内村さん:小学校6年生のときに体操の合宿でカナダに行ったとき、ホームステイ先がたまたま医師の家だったんです。「航平はどうしたの?なぜ薬を塗らないの?」と医師に言われて、薬についてしっかりアドバイスをいただくことに。そこでもらった薬を塗ってみると、肌がみるみるよくなったんです。航平の体質にあったのかもしれませんが、数週間ほどの合宿で、帰国して迎えにきた夫がびっくりしたほどです。また、同じタイミングで体育館を新しくしたこともあって、安心して練習できるようになったと思います。
── 当時を振り返って、改めてどう思いますか?
内村さん:大変だった時期もありましたが、あまり生活に制限をかけすぎずに、食事も自由にとらせてよかったと思います。また、体操の練習に集中しているときはかゆみを忘れていたようなので、熱中できるものがあったのもよかったとも思います。
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「褒めて育てる」をモットーに、子育てではほとんど叱ったことがないと語る内村さん。そこには、周子さん自身が厳しいというよりも「怖かった」と感じていた母親からの影響もあったそう。実母に怒りはないものの、自分の子どもが生まれた意見を尊重しながら優しく育てようと思っていたそう。子育てを終えた現在、いっさいの後悔はないそうです。
取材・文/松永怜 写真提供/内村周子