病気が理由で不採用「理解が広まってほしい」
── 就職活動も難航したと伺っています。当時の様子を教えてください。
小澤さん:就職活動をしていたころの私は、走ることや、自力での階段の上り下り、重い荷物の持ち運びなどに難しさを感じていましたが、日常生活に支障があるほどではありませんでした。パソコンを使ったデスクワークなら問題なくできると考え、就活を進めていたのですが、20社受けても内定は1社ももらえませんでした。
病気のことは公表していたので「病気がネックになっている」と感じることが多くて…。ある会社では、最終面接まで進み「小澤さん、これからよろしくね!」と好感触で終わったのですが、帰宅後に電話がかかってきて「ごめんなさい。上の者が小澤さんの病気だと採用はできないという判断で…」と断られてしまったことも。「私」というより「病気」に焦点を当てられているような気分でした。
大学の先生から「障がい者手帳を取得して、障がい者枠で受けてみては?」とアドバイスをもらい、障がい者枠で就職活動を進めてみたら、すぐに内定をもらえるようになったのですが、負担や責任が伴わない仕事が多く、あまりやりがいを感じられませんでした。
── 現在お勤めの会社には、どのように巡り会ったのですか?
小澤さん:多数の企業が出展する合同説明会に行って、説明を聞いたのが現在の会社でした。IT系の会社だったので、文系出身の私には縁遠いように思えましたが、社内の体制や仕事への向き合い方などを聞き、「多様性のある会社だな、考え方が素晴らしいな」と感じました。さらに、私と同じ筋ジストロフィーの方も働いていると知り、「この会社なら、私らしく働けるのでは」と、採用に応募することに。障がい者枠ではなく、一般枠で応募したところ内定をもらうことができました。それ以降、現在まで同じ会社に勤務しています。
── 病気を抱えながら働くことに、大変さは感じませんでしたか?
小澤さん:現在は人事部に所属していますが、パソコン作業はほかの人と同じようにできるので、特に大変だと感じたことはありません。
ただ、一緒に働いている人たちに、病気や特性のことを知ってもらえたら、もっと働きやすくなるんじゃないかなと感じたことはありました。私の場合は、重いものを持ったり、物を運ぶ作業にサポートが必要です。社内には、私以外にも病気や障がいを抱えながら働いている人が多く、おのおのに「手伝ってほしい」とか「配慮してほしい」というシーンがあると感じています。
これまで、障がいや病気のある人たちのコミュニティーを立ち上げて、「働きやすさ」について話し合い、その内容を社内に共有するような活動も行ってきました。病気や障がいを広く知ってもらうことが、働きやすさにもつながっていくのではないかなと考えています。
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その後、小澤さんは同じ会社に勤めていた男性と交際を始め、結婚を決意。現在は、1児の母として育児にも奮闘しています。
取材・文/佐藤有香 写真提供/小澤綾子