高校で出会ったギャル友「えみかは、えみかやん」

── そうなんですね。そこでは新しいお友達との出会いがありましたか?
小林さん:はい。高校で出会った友達がギャルで、メイクやファッションを一緒に楽しめるようになりました。もともと、メイクやファッションには興味があって毎月何冊も雑誌を買ってはモデルさんを眺めて憧れていたのですが、自分に似合うわけがないと決めつけていて。でも、新しい友達は好きなモデルやガールズグループが一緒で「えみかってギャルが好きなんだね」と盛り上がり、女子高生のおしゃれを目いっぱい楽しむようになりました。
── 新しいお友達には、病気のことを話していたのですか?
小林さん:あまり具体的には話していませんが、自分には持病があって、通院のために学校を休むことをあるよ、とは伝えました。それ以上、具体的に病名などは言わなかったし、言いたくなかったんです。でも友達は特に困ったような反応もなく「えみかは、えみかやん」と、その後も普通に接してくれました。
ただ、高校2年生になってすぐ、下唇から上唇に皮膚の部分移植をして唇の形を整える手術と入院のため、2週間以上学校へ行けない時期がありました。そこで初めて友達に、実は「口唇口蓋裂」という病気で、唇の手術をして見た目をきれいにしてくるから、しばらく学校を休むと正確に伝えました。友達はそのとき初めて「あ、そういう病気やったんや」と知ったと思うのですが、まったく構えず「そうなんやんな。がんばってかわいくなってな!」「退院したらいっぱい遊ぼう!」と手術に送り出してくれました。退院後は、唇の形が変わった私を見て「いいやん。私も美容整形したいわ」と言い出すくらいで、その明るさに救われました。
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共通の趣味を持つギャル友を得て、少しずつ自分を肯定できるようになった小林さん。いっぽう、年齢を重ねるにつれ難しい手術に挑むことになり、今まで心に壁を感じていた両親と気持ちをぶつけ合うようになりました。21歳で治療が落ち着き、ブログやメディアで「口唇口蓋裂」についての情報を発信。患者や家族の交流を目的に「笑みだち会」を立ち上げ、現在はNPO法人として病気の理解促進のための情報発信や交流会などを実施しています。
取材・文/富田夏子 写真提供/小林えみか