2012年に人気番組『はねるのトびら』が終了すると、コンビではなく単独の仕事が増えていったと語るキングコング・梶原雄太さん。しかし、相方がどんどん活躍していくいっぽうで、自分自身を追い込んでいった梶原さんは「芸人引退について」初めて妻に打ち明けます。すると── 。(全4回中の3回)

相方の活躍に気持ちだけ空回りして

梶原雄太
元読者モデルの未来子さんと結婚して18年目になる梶原さん

── お笑いコンビ「キングコング」として第一線で活躍し、現在はYouTuber「カジサック」として新たな道を切り拓いている梶原雄太さん。長年にわたり苦楽を共にしてきた相方の西野亮廣さんへのリスペクトを語られる場面も多く、強い信頼関係と絆を感じます。

 

西野さんといえば、「鋼のメンタルを持つポジティブな方」というイメージがありますが、梶原さんとしては、どのような部分に惹かれていらっしゃるのでしょうか。

 

梶原さん: すごいですよ、彼のメンタルは。鋼どころじゃないです(笑)。ただ、最初に惹かれたのはそういう部分ではなく、NSC時代に感じた「西野と組んだら売れそうな気がする」というインスピレーションだったんですでも、いざ一緒にやり始めてから「ほんまにこいつとやってけんのか?」と思う時期も長かったですね。

 

── 具体的にはどういう部分でそう感じたのでしょう?おふたりの間にギャップや温度差があったのでしょうか。

 

梶原さん:彼は、昔からものすごい「上」だけを見てるんです。僕も上を見ているつもりでしたけど、その角度が全然違う。僕が上だとしたら、彼は真上を見ている感じ。

 

──「真上」というのは「てっぺん」や「高み」という意味ですか?

 

梶原さん:それもありますが、西野の場合、まだ見ぬもの、見えない未来の「なにか」を見ているんですよね。たとえば、僕が「次の番組のときに、こういうことをやったらおもしろいかな」って考えているときに、彼は「この先のエンターテインメントはどう変わっていくか」みたいなことを想像していたり、常に新しいことを考えている。同じ上でも見ている景色が違うんです。

 

でも、その角度の違いって、コンビとしては決して健康的じゃない。やっぱり同じ方向を向いていないと、絶対に衝突するんですよね。特に20代前半のころは、ぶつかってばかり。「テレビや舞台でもっと前に出なあかんやろ」と彼は言ってくるけれど、こう見えて僕はグイグイ前に出て立ち回ることが得意ではなくて。漫才のネタ合わせでも、意見をぶつけ合ってケンカになることが多かったです。

 

でも、いつの間にかケンカすらなくなっていき、お互いに干渉しない、いちばん不健康な状態に突入してしまいました。

 

── まるで倦怠期の夫婦のような状態が続いていたのですね。その後、キングコングとしての活動にも転機が訪れます。2016年には、西野さんが手がけた『えんとつ町のプペル』が大ヒットし、絵本作家やクリエーターとして活動も軌道にのっていきました。

 

梶原さん:そうですね。2012年9月に『はねるのトびら』が終わると、西野は絵本作家としての活動に集中するようになりました。どんどん結果を出していくのを隣で見ながら、焦りばかりが募っていって。テレビ番組のひな壇にひとりで呼ばれることもありましたが、そもそもひな壇の経験がなく、先輩後輩とのつながりもないから、パスも回ってこない。前に出て爪痕を残してナンボなのに、これでいて自分から前に出るのが苦手な僕は、うまく立ち回れない。気持ちだけが空回りしていました。