数々の有名なお化け屋敷を手がけ、リアルなメイクでゾンビやモンスターを短時間で作り上げるマイケルティー・ヤマグチさん。お化け屋敷嫌いだった少年が独学で身につけたホラーメイクを施すと「人生観まで変わる」人もいるそうです。(全2回中の1回)

お化け屋敷作りのプロも「中2まで怖かった」

──「台場怪奇屋敷」台場一丁目商店街をはじめとする数々のお化け屋敷の企画、演出、監修、プロデュースを行うお化け屋敷スペシャリストであるマイケルティー・ヤマグチさん。映画やテレビ番組などでもずば抜けた特殊メイクのテクニックが評価され、熱烈なファンがいらっしゃいます。そもそも、お化け屋敷の魅力に気づいたのはいつですか?

 

マイケルティーさん:幼少期よりお化け屋敷の魅力にとりつかれ、自宅のクローゼットの中にお化け屋敷を作っていました。クモの人形を電池につないで糸で落とす仕掛けや、紙粘土で作ったモンスター、電池で動く犬の玩具を改造した魔物などを自作していたんです。小学3年生のころには、すでに「将来の夢は科学者。屋敷に装置を仕掛けて人々を驚かせたい」と公言していました。

 

でも、もともとはお化け屋敷が怖くて、中学2年生まで、街のお化け屋敷には一度も入ったことがなかったんです。大人に頼まれ、近所の小さい子たちを連れて、年上の子としてしかたなく入ったのが、初めてのお化け屋敷体験。怖くて、みんなを置いていち目散に走り抜けました(笑)。

 

そんななかでも、設備の故障やほこりが目についたほか、池に水がたまっていないなど質の悪さが印象に残り、「これでは心が動かされない。こんなお化け屋敷はダメだ」と、がっかりしたのを覚えています。この体験が「質のいいお化け屋敷を自分で作りたい」という思いをますます加速させました。

 

マイケルティー・ヤマグチ
2021年にハワイで運行開始したバス型お化け屋敷「GHOST BUS」車内の様子

── 中2でお化け屋敷を克服し、決意を新たにしたのですね。その思いをどのように昇華したのですか?

 

マイケルティーさん:ちょうど、ハリウッド映画のSFX(特撮)が話題になっていたので、自分でホラーの特殊メイクを研究しました。いとこの顔に溶かしたゼラチンを塗ってモンスターにしましたが、すぐに固まってしまいバリバリに(笑)。高校は化学科に進み、卒業後、一般企業に就職した後も夢を追い、海外製のホラーマスクの知識が縁となりマジックショップで知りあった世界的マジシャンのあと押しを得て、1992年、地元・長崎で150坪のお化け屋敷を作る仕事をしました。

 

これが連日1000人も並び、長期シリーズ化されて大成功を収めたんです。来場者からファンレターもいただきました。その後、1980年代後半から1990年代前半のテーマパーク開業ブームで作られたものの衰退した全国各地のお化け屋敷のリニューアルを手がけ、独学で学んだ特殊メイクやSFX・VFX(CGを使う視覚効果)、お化け屋敷プロデュースの手腕を買われて福岡の専門学校の特別講師に招かれました。生徒たちの実践の場として、お化け屋敷を作ったこともあります。