乳がんの全摘手術をして、胸がなくなる喪失感。経験した方の痛み、つらさ、喪失感は計り知れません。39歳で乳がんが発覚し、全摘手術を行った神田文子さんは、傷跡にショックを受け、一時は心療内科にも通うほどでした。(全3回中の1回)
検診では異常なしも「乳頭から出血して」
── 神田さんは乳がん手術後に着用できる補正下着の試着サロンを経営しています。ご自身も39歳で乳がんが見つかった、がんサバイバーだと伺いました。
神田さん:当時は3人の子育てと義理の父の介護をしながら、家業の不動産業を主人とふたりで営んでいました。毎日とにかく忙しくて、朝5時に起きて子どものお弁当を作ってから、夜10時までゆっくり座って休む時間もないような、無我夢中の毎日でした。2008年、急に乳頭から出血したんです。出産して何年も経っているし、乳腺炎ということもないので「少しおかしいな」と思いました。
ただ、毎年マンモグラフィーは受けていましたし、触ってもしこりを感じることはなかったんです。念のため病院で診てもらったところ、乳がんが見つかりました。しこりが乳頭の真裏だったので、自分では気づきにくかったんだと思います。当時は、世間的にもマンモグラフィーをやっていれば大丈夫という雰囲気だったんですが、私のがんはエコー検査で見つかりました。

── いまは、マンモグラフィーとエコーを併用するようすすめられることも多いそうですね。
神田さん:時代とともに変わってきていますよね。私のがんはステージ2と3の間で、全摘をすすめられました。セカンドオピニオンを受けることも考えたんですが、都内の専門病院に相談しようとしたら「半年待ち」と言われたんです。半年の間に、がんが転移してしまったらどうしよう、と。私には子どもたちのことがあるし、家業もあるし、介護もある。「私、いま死ねないわ」という思いが強くて、セカンドオピニオンはあきらめて、最初に受診した病院で全摘の手術をしました。