モデル・タレントとしてマルチに活動する佐藤かよさん。20代のころからアメリカ、イタリア、タイ、韓国などさまざまな国を訪れ、一時期は韓国に生活の拠点を移しました。海外での生活を通じて、彼女のなかで「自分を大切にする」という視点が大きく変わったといいます。(全3回中の3回)
どこの国に行っても悩みの根本は変わらなかった

── 佐藤さんは頻繁に海外に行かれていますよね。韓国でも芸能活動の幅を広げていらっしゃいます。
佐藤さん:はい。もともと好奇心が旺盛で、20代後半からは海外に住みたいという漠然とした思いがあり、いろんな国を訪れました。さまざまな国に行ってよかったと思うのは、「結局どの国に行っても、悩みの根本はあまり変わらない」ということを学べたことです。たとえば、アメリカはLGBTQの人にすごく寛容だと思っていましたし、タイは性転換手術も一般的で差別がないと思っていたんです。けれど、現地でできたトランスジェンダーの友達の話を聞くと、幼少期にいじられたり、私と同じような経験や悩みを抱えている人がどの国にもいました。
── 意外です。
佐藤さん:現地で仲良くなった人とSNSのアカウントを教え合うじゃないですか。そうすると、私のアカウントには公式マークがついているので、相手が私のことを調べるんです。そこで私に関するいろんな記事、「佐藤かよはトランスジェンダーのモデルだ」という内容が出てきます。すると、それまで私のことを人として好き、と好意的に受け止めていてくれた人も態度が急に変わるんです。この経験はアメリカでもイタリアでも韓国でも、どこの国でもありました。私が、トランスジェンダーだと知った瞬間に180度態度を変えたり、フェードアウトする人が本当にたくさんいました。
── そんなにあからさまに態度を変えるんですね。
佐藤さん:笑っちゃうくらいです。でも、どこの国に行っても人の本質はあまり変わらないんだなと気づきました。それで、他人の気持ちなんてもうあまり気にしなくなったんです。今までは、人に嫌われたくないという気持ちで過ごしていましたが、いい意味で「他人に期待すること」や「他人に理解してもらえること」に対して、あきらめのような気持ちが持てるようになりました。そんな人たちにいちいち傷ついていても仕方がないと思えるようになったんです。