NHK紅白歌合戦出場経験もある歌手の市川由紀乃さん。2024年6月に卵巣腫瘍が見つかり、開腹手術の結果、卵巣がんと判明しました。検査前には生理不順や不正出血の症状があったものの、40代後半という年齢的に更年期だと思い、1年ほどやり過ごしてしまったそうです。(全3回中の1回)
生理不順や不正出血を「更年期だから」と言い聞かせ

── 市川さんは2024年に卵巣腫瘍が見つかったそうですね。いつごろ、どのような症状があって病気に気づいたのでしょうか?
市川さん:2023年から生理不順や不正出血、腰痛といった症状がありました。ただ、年齢も40代後半にさしかかってきていましたし、同級生や先輩方から聞く更年期の症状と似ていたので、きっと女性特有のホルモンバランスの崩れや年齢的なものが原因なんだろうな、と考えていました。実は、鼻血がときどき出るようにもなっていて。いま思えば、それも病気のサインだったんだと思います。子どものころから鼻血を出した記憶がほとんどなかったのに、これも年齢的な体調不良のひとつだと自分に言い聞かせてしまいました。
── どのくらいの期間そういった症状が続いたのでしょうか?
市川さん:1年くらいは続いたでしょうか。仕事は問題なくできていましたし、食欲もある。体力的な衰えは感じなかったので、時間が経てばそのうち落ち着くものだろう、大丈夫と決めつけていたんです。また、病院へ行くなら婦人科だろうと思ってはいたのですが、今まであまり受診したことがなく、婦人科へ行くことになんとなく抵抗があって…余計に先延ばしにしてしまいました。
「いますぐすべての仕事をストップして」と

── そんな市川さんが病院へ行くことになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
市川さん:きっかけは由紀さおりさんです。当時、由紀さんとはテレビ番組などでご一緒させていただく機会が多くて、お会いすると毎回「最近、体調はどうかしら?」「喉の調子はどう?」と聞いてくださるんです。それで私も腰痛や不正出血があるような近況を報告していたら、「それは一度お医者さまに診ていただいたほうがいい」とアドバイスをもらいました。さらに、かかりつけ医がいるかと聞かれて特にいないと答えると、「じゃあ、私が信頼している医師を紹介するから、必ず行ってね」と。
由紀さんがすごいのは「行ってね」で終わらせず、私の楽屋までわざわざ来てその先生の連絡先を教えてくださり、「私、もう先生に電話して伝えてあるから。由紀乃ちゃんから連絡が来るはずだって。だから必ず連絡してね」と、そこまで手配してくださったんです。
── 親身になって相談にのってくださったんですね。
市川さん:「病院へ行って何もなければ安心できるし、まずは受診してみたら?」とお膳立てしてくださいました。大先輩がそこまでしてくださるなら、と私もやっと婦人科を受診する気になり、すぐに教えていただいた病院に電話をして検査日を決めて行きました。病院では問診や血液検査があり、内診をした際に先生から「少し気になるところがある」と言われました。
血液検査の結果も思わしくなかったようで、さらに詳しい検査が必要ということでCT検査とMRI検査を受け、その2〜3日後には先生から連絡があり、話があるから病院に来てほしいと言われました。そこで「卵巣腫瘍があります。いますぐすべての仕事をストップして入院し、手術を受けてください」と…。2024年6月のことです。