16歳のときに兄を亡くした経験から生まれた人生観
── 現実をきちんと見すえた選択をしてきたことで、前向きに人生を歩んでいるのですね。
青木さん:基本的にポジティブだと思います。とはいえ、「いつも明るく、何事にも積極的に取り組む」という一般的なイメージのポジティブさとは、ちょっと違っていて。私はつねに一歩引いて自分を俯瞰している部分があるんです。
どうしてかというと、人生には限りがあると思っているからです。すべてのことにおいて全力を出すのは時間もパワーもたらないのでムリだし、いざというときに疲れてしまいます。だから、自分にとって大事なものを考え、何事においても優先順位をつけることを意識しています。「全部を充実させよう」と欲張るのではなく、大切なことに集中して全力をつくすという意味で、すごくポジティブだといえます。

── とても客観的にご自身をとらえているのだと思います。こうした青木さんの人生観は、どんな背景があって生まれたのでしょうか?
青木さん:16歳のとき、2歳年上の兄を亡くした経験が大きいです。兄は生まれつき心臓が悪かったのですが、決して悲観的ではなく、とても明るく充実した人生を歩んだと思います。生きる時間の長さではなく、思いをこめて一生懸命生きることが大切なんだと学びました。兄の姿を間近で見て、私も一瞬一瞬をしっかり楽しもうと思うようになりました。もちろん大変なことも苦しいこともあると思いますが、その感情すべてを味わいつくし、ベストをつくしていくべきなんだなと。兄のように、しっかりと全力を尽くして生きようという思いが、私の人生の指針になっています。
取材・文/齋田多恵 写真提供/青木佐知