スラッと細い足になり「自宅の階段が上れない」
── 退院後、何か変化はありましたか?一般的に、入院で安静にしていると、特に高齢になるほど筋肉が落ちるとも言われていますが…。
未知さん:まさに入院により筋肉が衰えていて、自宅に戻ったとき、階段を上りきれなかったんです。途中で休憩しないと、2階までいけないなんて。とくに、私の部屋は3階なので困りました。入院中、ウォーキングを続けて体力をつけていたはずなのに、筋力がかなり落ちていたことに驚きました。入院中は必死に廊下をウォーキングしていましたが、階段を上り下りしていなかったんです。そのため、太ももを上げる筋肉が衰えてしまったのでしょう。
── それはショックですね。外出時は問題ありませんでしたか?
未知さん:自転車に乗ればもっと楽に移動できると考えて乗ってみたのですが、自転車をこぐ筋肉も衰えていて。こぐ力がゆっくり過ぎて車輪が進まず、自転車が倒れそうになるくらいでした。少しこぐ力がついても、だいぶ年上の高齢者にもかなわないくらいのスピードで、追い抜かされる始末。しかたがないので、近所を散歩したりしながら足の筋肉を鍛えることにしました。当時、私の脚はスラッとして細かったのですが、それは筋肉が落ちた結果なだけで、複雑な気持ちで眺めていましたね。それからは近所を散歩して、足を鍛え直して、ようやく普通のスピードで自転車がこげるようになりました。
── 体力回復の努力を重ね、仕事復帰に備えたのですね。復帰前後、不安を感じることはありませんでしたか?
未知さん:最初は、生放送のテレビ情報番組で復帰することになりました。でも、入院中に間質性肺炎治療のために大量投与されたステロイド剤の副作用で、テレビでの復帰直前に、顔がパンパンになってしまっていたんです。入院中は副作用が表れなかったのですが、退院してからしんどくなり、顔に一気に症状が出てしまいました。いわゆる「ムーンフェイス」と呼ばれる症状で、当時はどうしようかと思いました。
けれど、不安を抱えながらも、仕事ができるのは大変うれしいことなので、まわりに事情を説明しながら、少しずつ復帰しました。現在は、ステロイド剤の服用量が減ったので、副作用も落ち着き、以前と変わらず仕事に取り組めています。
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間質性肺炎をわずらう未知やすえさんですが、退院後は体力を徐々に回復させながら舞台復帰するまでに至ります。しかし、復帰当初は体力の完全回復とはいかず、声が出ずに自慢のキレ芸が鳴りをひそめたときもあったよう。そうした経験を機に働き方を見直し、今では家族公認のオフを設けることにしているそうです。
取材・文/岡本聡子 写真提供/未知やすえ、吉本興業株式会社