吉本新喜劇の看板女優・未知やすえさんは、5年前から間質性肺炎で闘病中です。完治しない病気とのつきあい方、舞台への思いや回復の道のりを聞きました。(全3回中の1回)
「風邪かな?」病院に行くと即入院と告げられ
── 漫才コンビとして活動後、吉本新喜劇に入り、今年で40年目を迎える未知やすえさん。キュートなルックスからは想像がつかない「脳みそストローでチューチュー吸うたろか!」など「キレ芸」が代名詞です。じつは5年前から闘病中だそうですね。
未知さん:2020年3月、ちょうど、新喜劇の先輩・末成映薫(すえなりゆみ)姉さんとふたりで行うディナーショーの練習をしているとき、せきが出始めました。自宅から駅まで歩くだけで呼吸が乱れたのですが、そのほかの自覚症状にとぼしく、「疲れがたまり、ちょっと風邪でも引いたのかな」と思って放置していました。
そのころ、もともとリウマチを患っていて手指も痛かったので、かかりつけの整形外科に行くと「これはリウマチだけではない。別の病気の可能性があるかもしれない」と言われ、内科でレントゲンを撮りました。すると、肺に影が見られ、医師から「いますぐ大きい病院に行ってください」と言われました。
私が「もう夕方なので病院に行っても、閉まっているのでは…」と迷っていたら、「救急で行ってください!」と医師にたたみかけられ、「え!そんなに急を要するんですか!?」と驚きました。そのままレントゲンを持って救急受診したら、「いつから入院できますか?」と、医師に聞かれました。あっけにとられて「何の病気ですか?」と聞き、「間質性肺炎です」と告げられました。でも、どんな病気かもわからないので「肺炎って死ぬんですか?」と聞き返したら、「死ぬわけではないけど、明日から入院できますか?」と言われたのですが、「いやいや、仕事の予定がつまっているのでムリです」と…。
とくに、映薫姉さんとのディナーショーは絶対にやりたかったので、「1か月後くらいなら、入院できます」と返事したら、医師は「は?」という感じで、私の意識のズレに驚いていました。結局、その後すぐにコロナが広がり、すべてのイベントや公演が中止になったので、早い段階で入院することになりました。

── 入院までの急展開に驚いたでしょう。ご自身はそこまで深刻な状態だとは思えなかったんですね。一般の肺炎とは異なり、間質性肺炎になると、肺の間質(酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞を支え、血管とつなぐ重要な機能を担う部分)に炎症や損傷が起こし、肺胞の壁が厚くなって酸素を血液に取り込みにくくなるのが特徴だそうですね。一度進行すると元に戻ることはなく、人により経過はさまざまですが、進行すると呼吸困難や、最終的には呼吸不全を引き起こす可能性があり、早期発見・治療が重要だと言われています。
未知さん:自覚症状がほとんどなくて元気なうえに、間質性肺炎という病気自体を知らなかったので、ことの重大さを理解しづらかったです。さらに、私はこれまで大きな病気を経験せずにきたので、周囲も入院に驚いていました。でも、その後、間質性肺炎は死につながる病気だと知り、徐々に恐ろしさを感じました。2023年に亡くなった上岡龍太郎さんや八代亜紀さんの死因も間質性肺炎だったんです。