「顔面動静脈奇形」という難病のため、生まれつき鼻と上口唇に変形がある河除静香さん。見た目の問題で就活に苦労したことで「結婚も難しいのでは」と思っていたところ、職場である男性と出会います。しかし交際して1か月経ったある日、彼が急に怒り出して── 。(全3回中の2回)
つき合って1か月の彼が急に怒り出して

── ご結婚をされるまでのお話をうかがってもいいでしょうか。
河除さん:私、見た目の問題があって就職活動がなかなかうまくいかなくて、すごく苦労したんです。それで、「このままでは、結婚相手を見つけるのも苦労するだろうな」と思いました。人生計画では20代のうちに結婚したいと思っていたので、「のんびりしてたらあかん!」と、20歳を過ぎたころから出会いを求めて映画サークルに入ったり、お見合いをしたり。今でいう「婚活」をしていました。
転職しようと決めたときも、「若い男の人がたくさんいる会社に就職しよう」と思って探しました。転職先は、倉庫の会社でした。結婚相手を探そうと思って入った会社でしたが、仕事もおもしろかったですし、がんばっていたらいろいろ任せてもらえて、自分に自信が持てるようになりました。
前にいた職場で、「あんたの魅力は性格やよ、その性格は武器よ」と言ってくださった方がいたんです。その言葉にも励まされましたね。
夫とは、職場で出会いました。4年間くらい、同じ職場で一緒に働いていたので、お互いにどんな人なのかはわかっていたのですが、つき合うとかではなくて。入社して5年目くらいから、夫も交えた老若男女のグループで富山の立山へハイキングに行ったり、食事に行ったりするようになったんです。その流れで「映画を観に行こう」と誘われて、つき合うようになりました。
── 結婚しようと思われたきっかけは。
河除さん:つき合って1か月くらいたったとき、車の中で話していたら、彼がいきなり怒り出したんです。何に怒っているのか、最初はわからなかったんですけど、よく聞いたら「あなたとは真剣につき合っていきたいと思っているのに、なんで顔のことを話してくれんがや」と。それで初めて、自分の病気のことを詳しく話しました。
そのとき、「この見た目のせいで、人にじろじろ顔を見られるのがイヤなんや」と打ち明けたら、「それなら、おれが着ぐるみを着て隣を歩く」と言ってくれたんです。「おもしろいことを言う人やな」とおかしかったですけれど、うれしかったです。
── 優しい方ですね。
河除さん:それからしばらくして「結婚しよう」という話になりました。どちらの両親にも、反対されることはなかったですね。お義母さんはちょっと天然な人で(笑)、彼が私の病気の話をしたら、「あれ?そうやった?」って。彼の実家には何度か遊びに行っていたので、私の顔は見ていたはずなんですけど。うちの両親は、もう「ありがとうございます!」と。私の場合はスムーズに結婚まで進みましたけれど、見た目問題の当事者の人たちは、結婚に反対されるという話もよく聞きます。