いじめられた相手に成人式で再会し

── いじめられた相手と大人になってから再会したそうですね。
河除さん:成人式の日に、中学校のときにいじめられた相手と久しぶりに会ったんです。2次会か3次会で居酒屋に集まったとき、通路で対面しました。そうしたら向こうから、「昔、いじめて悪かったな。ごめんな」と言ってきて。それを聞いたら、あんなに大嫌いで恨んでいた相手なのに、「もういいわ」という気持ちになりました。それで、「もういいよ、気にせんで」と答えました。
──「もういいよ」と言える心の広さに驚きます。
河除さん:相手がほんとうに悪そうにしていて、ちゃんと謝ってくれたんです。いじめた相手を恨み続けているのは私にとって苦しいし、つらいことでした。だから、謝ってくれてありがたかったというか。自分がラクに生きられるようになったのは、彼が謝ってくれたおかげだと思っています。
そのころの私は、短大で楽しい生活を送っていましたし、「いじめられた私は被害者で、何も悪いことはしていない」と思えていたこともあるかもしれません。それに、「無知がいじめにつながった」とも思っていました。当時、周りの子たちが病気のことを理解していたら、違ったんじゃないかと。「知る」というのはすごく大事だと思います。
ただ、これだけは言いたいのは、いじめられた人がみんな、いじめた人を許さなくてもいいということです。SNSでも「自分もいじめた人を許さないといけないと思うけれど、できない」と言われることがあるのですが、それはしなくていい。それで自分がラクになるならそうすればいいし、許せないなら、その気持ちを持っていていいと思います。
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見た目を理由にいじめられた過去を乗り越えた河除さん。結婚して2人の息子さんを育てながら、自身の経験を伝えるひとり芝居を始めました。見た目が原因で差別や偏見を受ける「見た目問題」を発信する河除さんの活動は、多くの人の共感を呼んでいます。
取材・文/林優子 写真提供/河除静香