「ママは階段降りられないから、ママはこっちね」

しぶき
生後まもないわが子を愛おしそうに見つめるしぶきさん

── ただでさえ、夜泣きの時期は大変な時期かと思います。

 

しぶきさん:そうですね。それでも自分にできることが少しずつ増えてきて、ミルクを作ったり離乳食を作ったりしながら、徐々に慣れていったと思います。

 

── 現在、お子さんたちは4歳になりますが、いかがですか?

 

しぶきさん:今は今で大変です。子どもたちが元気に成長していることはとてもうれしいのですが、目を離すとその辺をものすごい勢いで走り回っているんです。また、甘えなのか、やっちゃいけないこともわざとしてくることもあって。

 

── しかも同時に2人ですよね。

 

しぶきさん:双子は姉妹なのですが、すごくケンカもするんですよ。子どもって力の加減を知らないから、お互い顔を強く引っ張ったり、腕を噛んだり、しまいには泣き叫んでいることも。でも、私もさすがに危ないと思うことは注意します。頭や顔も叩いたらダメだと叱るし、この私がこんな大声出るんだっていうくらい、大きな声で子どもたちに注意することもあります。

 

── お子さんたちは、しぶきさんの障がいについて理解されていますか?

 

しぶきさん:ちゃんと説明したことはないですが、なんとなくわかっているようです。外を歩いていても「ママ、階段降りられないから、ママはこっちね」とスロープ側に誘導してくれるとか。2、3段の階段なら杖か手すりがあればひとりで昇り降りできるんですけど、それ以上になると大人に支えてもらわないと難しいんです。

 

また、子どもたちは杖が少しだけ遠くに置いてあると持ってきてくれたり、ご飯の準備もお手伝いしてくれることもありますね。

 

顔面麻痺についても、今のところ子どもたちに何か言われることはありません。子どもたちの態度を見ていると、麻痺があってもなくても親がいちばんなのかなって思っています。

 

── 出産する前は子育てに自信がないとおっしゃっていました。今はいかがですか?

 

しぶきさん:今も自信があるわけではないですが、家族や周りの人たちがサポートしてくれますし、とにかく子どもたちがかわいくてしょうがないですね。母親になって本当によかったと思います。振り返ると、中学生で障がいを持ち、その後もたくさんつらい思いもしましたが、自分にこんな幸せな人生が待っているなんて想像もしませんでした。夫も相変わらず助けてくれますし、周りに感謝しながら今はとても幸せに過ごしています。

 

取材・文/松永怜 写真提供/しぶき