人づき合いに悩み「今でも間違えたと思う」

上田航平
いろいろとこじらせていた劇団時代

── 大学進学後のキャリアは順調でしたか?

 

上田さん:大学に入ってからはいじめに遭うようなことはなく、お芝居を始めました。ただ、もういじめられたくないという反動からか、僕自身が変な方向にいってしまって。金髪、カラコン、派手な服、大きな声などで、自分を強く見せるようになり、人を寄せつけないタイプになっていました。人とのつき合い方がわからなくなってしまい、今でもやり方を間違えたと思っています。

 

── 結果、友だちはできなかった?

 

上田さん:お芝居の仲間はいたんです。それで大学卒業後に劇団を立ち上げて運営していたのですが、ある日の打ち上げでメンバーのひとりが辞めたいと言い出して。それで「ほかにも辞めたい人がいたら辞めてもいいよ」と言ったら、なんと20人以上いたメンバー全員が辞めてしまったんです。結局、誰も僕のことを好きじゃなかったんですよね。

 

それからは借金を抱えながらひとりで舞台を演じ、宣伝して、受付もして頑張っていたのですが、借金が増えてきたので「これで最後にしよう」と。そう思っていた公演で、なぜかプロジェクターから火が出てしまい…。幸いボヤですみましたが、神さまに「もう辞めろ」と言われているのだと思い、25歳のときにお芝居は辞めました。

 

── そこからはなにを?

 

上田さん:大学の先輩に声をかけてもらい、お笑いをやることになったんです。お笑いを通じて出会った人たちがみんなすごく優しくて、そこから僕も人をぞんざいに扱ってはダメだと反省し、変われたと思います。いじめられてつらい時期がありましたが、僕はお笑いと出合ったことで人生が変わったと思っています。

 

── 夢中になれるものって大切ですよね。今、いじめで悩んでいる人にも、届くといいですね。

 

上田さん:子どものころって自分の世界がすごく小さくて、家、学校、SNSくらいです。本当はもっともっとたくさんの世界があるのに、それに気づくことはとても難しい。狭い世界では自分はいい点数を取れないかもしれないけれど、きっとどこかにいい点数が取れる世界があるはずです。

 

たとえば少し日常のルートを外れて、いつも行かない公園や図書館などに寄ってみるだけでも、今までとは違う世界がみつかるかもしれない。知らない世界はまだまだたくさんあることを、いま悩んでいる子がいつか知ってくれたらと切に思います。


取材・文/酒井明子 写真提供/上田航平