お笑い芸人の上田航平さんは、小学校と高校のときにいじめられた経験があります。いじめられたことが原因で、高校卒業後は人とのつき合い方がわからなくなった時期もあったそうで── 。(全2回中の2回)
最初はいじめに気がつかなかった

── 小学校、高校とこれまでの学生生活で2回、いじめにあったことがあるそうですね。小学生のときはどのようなことをされたのでしょうか?
上田さん:小学生のときのいじめに気づいたのは高学年になってからでした。それまでもいじめられていたのかもしれませんが、僕自身が気づいていなかったんです。当時はまだ「いじめ」と「いじり」の区別がついていなかったのかもしれません。
たとえば、小学校低学年のころに、僕の体操着を泥水に投げ捨てられて踏まれるという出来事がありました。はたから見たらギョッとするような話ですが、当時は、踏まれたのを見た僕もその後みんなといっしょになって楽しく体操着を踏みまくっているという…。むしろ僕がいちばん楽しんでふざけて自分の体操着を汚していたみたいですね。
そんな感じなので、低学年のころはそれをいじめだとは思っていませんでした。やんちゃだったんだと思います。その現場を見た母も「うちの子がいじめられている…」と最初は心配したそうですが、僕がいちばんはしゃいでいるので「これは違う」と思ったようです。
── いじめかもと思ったきっかけがあったのでしょうか?
上田さん:小学校の高学年になったある日、バッグやその中身を教室の窓から外に投げ捨てられたことがありました。それ自体はまたふざけていると思ったのですが、その日はバッグの中に授業で使うために家から持ってきた「お茶碗」が入っていたんです。お茶碗って僕だけでなく家族のものでもあるわけです。それが目の前で割れたのを見て「これは悪意があるのかもしれない」と感じたのを覚えています。
思い返してみれば、当時はクラスの治安がとても悪かったと思います。転校生が来て、いじめられてすぐに別の学校に転校していったこともありました。先生も誰が悪いというよりも、「止めることのできなかったクラス全体の責任」という感じで、いじめの中心になった人たちが注意されることはなかったです。
── いじめに気づいてから、上田さんはどうされたのですか?
上田さん:今までのように彼らといっしょに楽しむことはできず、相手にしないようになりました。いじめる側は僕がリアクションをするからおもしろいわけです。僕が特に反応しなくなると、しつこく絡まれることは減っていきました。ちょうど中学受験のために勉強を本格的に始めた時期でもあったので、合格すればその人たちとも違う学校に行けると思うと、多少のことは我慢できましたね。
あと、クラスでいじめっこがすごく暴れて、クラスメイトがケガをしたことがあったんです。そのときに自分もこのままではやられると思い、近くにあった消火器を床に投げつけました。そうしたら、はずみで中身の真っ白な粉が出てしまって、けっこう大変なことになってしまって。いじめっこたちもそれを見て「こいつはキレたらヤバい」と思い、あまり絡んでこなくなったのかもしれません。