野球から離れた父が老け込み…
── お父さんは今でも監督をされているのですか?
上田さん:今は四国アイランドリーグplusに所属する「香川オリーブガイナーズ」の球団代表をやっています。父はあんなに野球一筋だったのに、25年間、慶應義塾高等学校の監督を勤めたあと、一度野球から離れたんです。自分が若いころに年上の指導者たちにいろいろと意見を言われてイヤだった経験があったようで、このまま続けて自分も同じように余計な意見を言って老害になってしまうのではと。自分がしたイヤな思いを後輩たちにもさせたくはなかったようで、まだ続けられたのに、57歳のときに監督を辞めてしまったのです。
本人は「これからはゴルフでも楽しむよ」と言っていたのですが、監督を辞めてからみるみる白髪が増えて老け込んでしまって。母と僕はすごく心配になってしまい、「本当は野球がやりたいんでしょ?老害でもいいから野球を楽しんでほしい」と伝えていました。すると、あるとき四国の野球チームから声がかかって。途端に父の目がキラキラ輝き出しました。結局、今はまた大好きな野球に携わっています。
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小学4年生まで野球漬けの日々を送っていた上田さん。その裏では「体操着を泥水に放り込まれる」「バッグを窓から投げられる」などのいじめにも遭っていました。慶應義塾高等学校に進学後も入部した剣道部で「いじり」と「いじめ」を履き違えた行動をされることが多かったとか。そのせいで人とのつき合い方がわからなくなり、大学進学後は周りの人たちがどんどん離れていってしまうことに…。ただその後、お笑いとお笑いを通じて出会った人たちのおかげで、生き方が変わり、今があるのだそうです。
取材・文/酒井明子 写真提供/上田航平