自分に自信がついたことで、好転できた

── その後、摂食障害は25歳くらいで落ち着いたそうですね。どうやって改善していったのでしょうか。
琴奈さん:いくつか理由がありますが、単純に食べることばかり考えるのに飽きたというのと、自分に自信を持てたからだと思います。
アルバイトをしていた食品会社に正社員採用されたんです。勤務時間が9時〜17時と決められたことで、乱れていた体内時計が正常に戻っていった気がします。職場の環境はとてもよく、一緒に働いている人たちも素敵な人たちばかりだし、営業の成績もよかったんですよ。それがすごく自信に繋がりました。
あと、父や周りの友達の優しさも感じました。父はとても親身になってくれて、テレビで摂食障害の番組があると知れば「一緒に観よう」と声をかけてくれたり、私に合いそうな病院を探してくれたり。父と暮らし始めて過食が進んだ時期もありましたが、その間もずっと見守っていてくれていたんです。
友達は、私が遠くに引っ越しをしてもわざわざ会いに来てくれて。「前日の夜に過食をしてしまって今日は何も食べたくない」と私が言っても「大丈夫」と言って、優しく受け入れてくれました。周りの助けは大きかったですね。
また、摂食障害が始まった後に交際をしていた彼がいました。とても理解のある人で、本を買って病気について調べてくれたし、心の拠りどころになっていたんです。残念ながら振られてしまいましたが、せっかく体調がよくなってきたのに、彼に振られて病気が悪化するのは嫌だと思い、「病気をちゃんと治したい!」とさらに思うことができました。
── 前向きに変換できたと。
琴奈さん:そうですね。人との関わりが増えて視野が広くなったんだと思います。過食がひどいときは人と会いたくない時期もありましたが、会社に入って仕事も任されて、彼氏もできて友達とも遊べるようになると、自分の人生の彩りが豊かになっていきました。自己肯定感も上がったし、体調も自然とよくなっていったように思います。
── 今はプラスサイズモデルとしても活躍されています。
琴奈さん:自分で応募しました。せっかく摂食障害がよくなったし、無理にやせるのではなく、自分がやりたいこと、考えていることを発信できたらと思ったんです。今はとても体調がいいし、食欲もあります。体重は76キロくらいですが、以前のように体重計に乗って一喜一憂することはなく、食事の時間が楽しみで、なんでもおいしくいただきます。食が楽しみすぎて昼にお弁当を2人前食べることもありますが(笑)、それ以上、食べすぎることはなく、コントロールできています。日々穏やかに過ごせることに感謝しながら自分ができることを発信していきたいです。
取材・文/松永怜 写真提供/琴奈