歌手に憧れて1年間で約40キロのダイエットに成功した琴奈さん。しかし極端なダイエットからストレスで過食を繰り返し、食欲が抑えられずについには極端な行動に出るようになってしまったそうです。(全2回中の2回)
無心で夜な夜な食べ続けた

── 高校卒業後にフリーターになったのを機に、暴飲暴食が加速したという琴奈さん。一時期は88キロまで体重が増加しましたが、「歌手になる」という子どものころからの夢が捨てきれず、一念発起してダイエットすると、1年で約40キロの減量に成功します。
芸能事務所に入り、歌手ではなく、先にオーディションに受かったアイドルとして活動していきますが、体重をキープすることが次第にストレスになりリバウンド。過食が始まったころに、小学2年生のころに離婚し、ときどき連絡をとっていた父と久々に会い、気持ちを立て直すためにふたりで生活を始めることになったそうですね。
琴奈さん:当時は1日6時間もジムで運動するなど、やせることに必死でストレスが溜まっていたのだと思います。ひとり暮らしをしていたのですが、そこから離れた場所に引っ越し、父とふたりで暮らすことになりました。
引っ越し作業をしていたときに、父がふと冷蔵庫に目をやると「ここを開けたらいけない!」と油性ペンで書いてあって。何か食べて太ってはいけないと思い書いたんですが、さすがにそれを見て父はひいていましたね。
── たしかに。それは驚きそうです…。お父さんとふたりで暮らすようになって、過食はどうなったのでしょうか?
琴奈さん:体重のことばかり考えて苦しかったので、気持ちを安定させるために父と生活を始めましたが、結果的にさらに過食が進んでしまいました。ひとり暮らしをしていたときは食べすぎても食事や運動で調整できたんです。でも、アイドル活動は気力が続かずに辞め、バイトも引っ越して遠くなったので辞め、これと言ってやることがなく、夢もなく、自分を少し責めるようになって、さらに過食を悪化させてしまったんです。
ふたり暮らしを始めたときは52キロくらいだった体重が、半年後には77キロになっていました。とくに夜に過食してしまうことが多く、朝起きて、お腹が苦しくて罪悪感にさいなまれることがしょっちゅうあったんです。「精神的に疲れていると夜がつらくなる」ってよく聞いたことがありますが、私の場合は朝がつらかったですね。夜、過食したことで朝から泣いて、パニックになってしまって。当時、日記に「過食をした日」「大丈夫だった日」をチェックしていたのですが、「過食」が続くのを見ては落ち込んでもいました。
また当時、読んでいたダイエットの本に「ダイエットをするなら1日3食食べること」とあったので、朝お腹いっぱいでも何か口に入れないといけないと思って、おにぎりでもパンでも何かしら口にしました。
── 食べているときはどんな気持ちですか?
琴奈さん:無心ですね。食べることが楽しいわけじゃなくて、食べ始めたら止まらないんです。父と生活を始めて少ししてから、食品会社の営業のアルバイトを始めました。昼ご飯にお弁当を買って箸がついてないと、再びもらいに行くのがめんどうで、素手で卵焼きとかお総菜を食べるようになってしまって。獣みたいで自分でもすごく嫌だったんですけど、早く食べたい気持ちが勝っちゃうんです。冷凍の焼きおにぎりを電子レンジで温める時間が待てなくて、凍ったまま食べてしまうこともありました。
当時24歳だったので、世間は恋愛や仕事など人生を謳歌しているはずなのに、私は何やってるんだろうと落ち込んで。食べても吐いてしまうこともあったので、精神科も受診しました。
── 病院の先生はなんとおっしゃっていましたか?
琴奈さん:4か所くらい回りましたが、「気分障害」「摂食障害」と言われました。治療はカウンセリングのほか、気持ちを落ち着かせるための薬をもらいました。