崖っぷち「30歳で芸人辞める」と退路を断って
そんな日々のなかで、『エンタの神様』出演の話が舞い込んできたんです。でも、当時の僕は新しいものを関西弁でやりたいという気持ちが強かったので、関西弁を標準語に直すことや台本が決まっていることがどうしても嫌で。若手やったのにテレビの人と「あれは違う。これは違う」というやりとりを1年間ずっと続けていました。
ようやく「来週そのネタで収録に行きましょう」と言われた矢先に、番組が終了してしまったんです。「この1年間、自分のお笑いもできんかったし、テレビの人の言うことを聞くだけやったんかな。意味なかったんかな」と落ち込むいっぽう、これまでの打ち合わせで「リズムネタを作りませんか?」と言われたことが頭に残っていて。
そこで、試行錯誤を重ねながらリズムネタを考え出したんですけど、当時はまだリズムネタ自体があまり認知されていない時期で。長年、コントと漫才を見てきた作家さんからは「それ何なん?」「センスないで」「やめたほうがいいで」というアドバイスしか受けられず。悔しい思いばかりでお笑いを辞める寸前だった28歳のときに結婚することになり、相方の藤田にも妻のお父さんとお母さんにも「30歳になったら辞めます」と伝えました。
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覚悟を決めた石山さんの運命を変えたのは、奥さまでした。奥さまの「下と合わすな。上と合わせろ」という叱咤激励で奮起したのち、新婚旅行先でリズムネタ「ダンソン」をひらめきます。結果、『キングオブコント2014』では「笑い待ち」を経験するほどの大ブレイクを果たし、その後の活躍に繋がっていったそうです。
取材・文/長田莉沙 写真提供/石山タオル