つらかったバレーボール大会のはずが
── それはなぜでしょう?
星来さん:球技大会がバレーボールだったので、参加できなかったんです。もともと体を動かすことが好きなので、みんなが楽しそうにプレーしている姿を見るのがもどかしく、正直つらかったですね。素直に応援する気持ちにはなれず、学校を休んで母と遊びに行ったり、図書館で1日中過ごしたりしていました。でも、そんな私の気持ちを察してか、試合の合間に友達がわざわざ図書館まで会いに来て、普段通りにおしゃべりをして過ごしてくれたんです。あのときは本当にうれしかったですね。
── 障がいと向き合いながらも、今の星来さんはとても明るく前向きで、自分のことをしっかり表現されていますよね。その強さやポジティブさは、どんな経験から育まれたのでしょう?
星来さん:私の性格形成には、母の育て方と周りの環境が大きく影響していると思います。母は、私が「かわいそうな子」と思われることをいちばん嫌がっていて、母自身も決してそう思わないように接していたようです。小さいことをネガティブにとらえないように、幼いころからいろいろと工夫してくれました。たとえば、地面にいるアリを見つけると「ちっちゃくてかわいいねえ」と言ってくれたり、小さな花を見て「小さいのにすごいね!」と前向きな言葉をかけてくれたり。おかげで、これまで一度も「小さいことが嫌だ」と思ったことはありません。
── お母さんの言葉が、星来さんの自己肯定感を育んでくれたのですね。周囲から「小さくてかわいい」と言われることもあったと思いますが、そうした言葉はどのように受け止めてこられたのでしょう?
星来さん:母のおかげで、まったくネガティブにはとらえていません。人と違う身長をマイナスにとらえるのではなく、むしろ「自分にしかできないことがあるはず」とプラスの発想で考えられるように育ててもらえたことを感謝しています。
── 星来さんは、人とのつながりをとても大事にされていると感じます。相手と向き合うときに、どんなことを意識していますか?
星来さん:私は、相手とお互いに偏見を持たず、自然体で言葉を交わすことを大切にしています。「これは言わないほうがいいかな」と言葉を選ばれるより、素直に「小さいね」って言ってくれるほうがいいんです。そこから会話が生まれ、お互いの距離も縮まりますから。
自分のことを発信するのも、コミュニケーションのきっかけになればという思いがあります。私の話を通じて「いろんな人がいて当たり前」と感じてもらえたら嬉しいですし、誰もが自分らしくいられる社会に少しでも近づけたらいいなと思っています。
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大学では幼児教育を学んでいる星来さん。教育実習では「小さい先生は嫌だ!」と子どもたちに言われたこともあったそう。「まずはいろいろな人がいると知ってもらうことが共生に繋がる」と、今後も当事者として情報を発信していきたいと語ります。
取材・文/西尾英子 写真提供/アクセシビューティーマネジメント、星来