思春期の娘の変化「姉との関係も変わって」

姉のここなさん小6、ゆいなさん小3。仲良し姉妹
姉のここなさん小6、ゆいなさん小3。仲よし姉妹

── 現在、ゆいなさんは中学生ですね。

 

蓬郷さん:今年で中学2年生になりました。ゆいなには3歳年上の姉、ここながいるのですが、「お姉ちゃんが通っていた中学校に行きたい」と希望したので、地元の中学校への入学を決めました。現在は、自転車で通学しながら、特別支援学級に通っています。

 

── 自転車で学校に行くための練習もされたのでしょうか。

 

蓬郷さん:もちろんです。入学前に、「お姉ちゃんと同じように自転車で行く」と言い出したので、「それならば!」と私の意欲にも火がつき、自転車通学の練習をスタートしました。徒歩通学とは、交通ルールや気をつけるポイントが異なり、覚えるのにも時間がかかりました。1年生のころは、私も自転車で後ろからついていきましたが、2年生になった今はひとりで通っています。

 

── 常にゆいなさんの意思を尊重し、実現するまで支えるという蓬郷さんの姿勢が素晴らしいですね。

 

蓬郷さん:何かしらの不安があるときには、「練習すればいい」ということを繰り返し学んできたおかげです。この習慣が身に染みついているんだと思います。「誰かにやってもらう」ことは簡単ですが、「自分でできた」ときの喜びは格別です。ゆいなには、その気持ちをたくさん味わってほしいと思っているんです。

 

── ゆいなさんは、どのように中学校生活を送っていますか?

 

蓬郷さん:1年生のときは、特別支援学級に在籍しながら、通常学級でも活動する「交流」という仕組みを取り入れてもらっていました。しかし、ゆいなが思春期を迎え、人の視線が気になったり、相手の言葉のニュアンスに敏感に反応するように。先生から「◯◯をやりなさい」と言われるか、「◯◯をやってください」と言われるかでも、ゆいなは受け取り方が違ってしまって。強いニュアンスの指示に対しては、「攻撃的な言葉」として受け取ってしまい、ゆいなが先生に対して手を出してしまうことがありました。

 

現在は不安要素が多いため、交流はいったんストップしていて、特別支援学級のみで授業を受けています。また、私も授業に同席させてもらいながら、ゆいなの様子を見守り、ゆいなの気持ちを代弁しつつ、先生と「どういう言葉がけをするべきか」を模索しているところです。

 

さらに、思春期の影響からか、姉のここなとの関係にも変化が出てきました。以前は仲のいい姉妹でしたが、最近のゆいなは、勝手にここなをライバル視していて、一緒の部屋にいたがらず、よくわからない理由で怒ったり、ときにはここなに手をあげてしまうことがあります。

 

── そのようなとき、蓬郷さんはどのように対応するのですか?

 

蓬郷さん:「今のは間違っているよね」とゆいなをいさめつつ、「叩かれて腹立つよね」とここなに共感してなだめて…。姉妹の間で仲裁役をしながら、右往左往しています。ここなは、これまでずっと第二の母としてゆいなをサポートし、かわいがってきてくれたので、今の状況は正直悲しいです。でも、お互いに「距離を取るべき時期」なんだろうなと考えるようにしています。

 

── ここなさんは、妹の行動の変化に不満を感じているのでしょうか。

 

蓬郷さん:今も昔も、ここなはゆいなへの不満を口にしません。ゆいなに手がかかるぶん、ここなにはたくさん我慢をさせているなと感じているので、ここなとの時間もたくさん作って、対話していきたいと考えています。

 

ゆいなとここな、それぞれが「今、楽しいことをできているか」「今どうしてほしいのか」を意識しながら過ごしていきたいと思っています。

 

 

ゆいなさんとの日常を発信している蓬郷さんのInstagramアカウントは、現在フォロワー数18万人越えと大人気。さらに、パワフルな蓬郷さんの話を聞きたいと、全国各地から講演会に呼ばれており、毎週末のように家族で出演しているそうです。そんな蓬郷さんですが、世間に知られるきっかけとなったのはSNSに投稿した「父が流した感動の涙」を不思議そうに見つめるゆいなさんの動画だったそう。「悲しい涙」は知っていても、「感動の涙」を知らなかったゆいなさんの純粋な姿が人々の心を惹きつけ、今の活動に至ったそうです。


取材・文/佐藤有香 写真提供/蓬郷由希絵