最初は「かっこいい自撮りが撮りたい」という思いから。気づけばスピードや技を競う「ドローンレース」のレーサーとなり、日本代表にまでなった白石麻衣さん(43)。選出された当初、娘はまだ生後2、3か月。当初は大会出場を悩んでいましたが── 。(全2回中の2回)

「日本代表に選ばれました」と突然、連絡がきた

── 2018年、白石さんはドローンの世界選手権で日本代表チーム初の女性パイロットに選出されたとのこと。当時の様子を教えてください。

 

白石さん:2017年ころからドローンに夢中になりました。最初は一般的なドローンで空撮を楽しんでいたのですが、アクロバティックな操縦ができる「FPVドローン」の存在を知りました。FPVドローンを使ったドローンレースにも積極的に参加していたんです。当時はあまり情報がなく、ドローンを趣味とする人たちと一緒に情報を集めたり、自分たちで機体を組み立てたりしていました。レースでもいい結果が出せるようになり、もっと上手になりたい、もっとドローンに取り組みたいと考えていた矢先に妊娠。2018年3月に娘を出産してからは育児中心の生活をしばらく送っていました。

 

そんなとき突然「ドローンレースの団体」と名乗る人から「白石さんがドローンレース世界選手権の日本代表に選ばれました」と連絡があったんです。その団体のことは知らないし、ドローンレースの世界選手権ってどういうこと!?とわからないことだらけで…。詐欺かもしれない…!と警戒さえしていました。

 

白井麻衣
バリ島にある引退した飛行機をホテルにした「プライベート・ジェット・ビラ」で撮影

そこで、ドローンを一緒に楽しんでいた仲間に「こんな連絡がきたんだけど、どう思う?」と聞いたところ、「今度ドローンレースの世界選手権があって、白石さんが日本代表に選ばれたみたいだよ」と言われたんです。どうして私が…?と信じられない気持ちでいっぱいでした。家族や周囲に言っても「日本代表…?へえ、すごいけど、実感わかないね…」と、ピンと来ていなかったです。

 

── 本当に突然、連絡が来たんですね。

 

白石さん:当時はまだ、世界選手権自体が始まったばかりでした。だから、日本国内でも代表選手を選ぶための選抜大会もなかったんです。私もまだドローンを始めて1、2年程度でしたが、女性ではドローンを操縦できる人自体が少ない状況でした。

 

世界選手権は5人のチームでレースに参加するルールです。チームにはひとりは女性、ひとりはジュニア選手を入れると決められていて、私はその女性枠に選ばれました。選出されたとき、娘はまだ生後2、3か月。世界選手権は半年後だから、子どもは生後8、9か月で卒乳もしていない時期です。日本代表に選ばれたのは大きなチャンスでぜひ出場したかったのですが、試合会場が中国の深センと聞き、まだ幼い娘を海外に連れていけるか悩みました。