「ドローンは危険なもの」を払拭したい
── 現在の白石さんはレースには参加していないのでしょうか?
白石さん:選手を引退したわけではないのですが、以前のようにトップをめざして勝負する方向からは変わりました。「自分が優勝をめざす」というより、「たくさんの人にドローンの魅力を知ってほしい」という方向にシフトしています。多くの人にドローンの楽しさを知ってもらうのは、とてもやりがいがあります。イベントを開催したり、ドローンで撮影した映像をインスタに公開したり、ドローンを広める活動を行っています。
── ドローンを広めたいと思うのはなぜでしょうか?
白石さん:いちばんの理由は、私自身がもっと楽しみたいから(笑)。ドローン人口が増えれば、自由に飛ばせる場所が増えるかもしれません。ドローン仲間が増えるのもワクワクします。最近は競技人口が増えてレースのレベルが上がっているいっぽうで、ガチで勝負している人が多く、「ゆるく気軽に楽しみたい」と考える初心者の方にはちょっと敬遠され気味な傾向がある気がしていて…。私がドローンレースに挑戦したときのように、もっと誰もが楽しめる雰囲気を作り、間口を広げたいです。
ただ、ドローンってネガティブなイメージがあるのも事実です。2015年、首相官邸にドローンが落下した事件や、横須賀基地にドローンが侵入した2024年の事件などが多くの人に強く印象づけられています。「ドローンは危険なもの」というイメージを払拭し、「すごくカッコよくて素敵なもの」と伝え続けていきたいです。
ドローンは年齢に関係なく取り組めるものです。レースに参加する場合も、ほかのスポーツに比べればそこまで体力は必要ありません。撮影をするにしても、これまでは見たことがない景色を映像や写真に残せます。私はドローンを操作して、「こんなに楽しいことができるの?」と、新しい発見がたくさんありました。レースに参加する緊張感や達成感も味わえたし、これまでだったらヘリコプターなどを使用しなければ撮影できなかった景色も手軽に映像に残せます。同じ楽しみを分かち合える仲間がもっと増えたらいいな、という気持ちでいっぱいです。
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ドローンを操縦する楽しさから、ドローンレーサーという競技者にまで道を極めていった白石さん。夫をはじめとする家族の支えもあって、幼い娘を育てながら世界大会などにも挑戦してきました。その長女も今では小学2年生。今後は、家族にとって日常になったドローンをもっと普及させたいそうです。
取材・文/齋田多恵 写真提供/白石麻衣