好意を寄せてくれる相手がいても、自分が難病を抱えていたら、結婚をためらう人はいるのではないでしょうか。7歳でクローン病と診断された高橋めいこさんも、そのひとり。しかし、目の前に現れた男性はすべてを受け入れ、一途な行動にうって出ます。(全3回中の2回)

ドライブ中に漏らしても笑い飛ばしてくれた彼

── 高橋さんは7歳のとき炎症性腸疾患のひとつである難病「クローン病」 と診断されたそうですね。クローン病とは口から肛門までの消化器官に慢性的な炎症が起こる原因不明の病気で、治療方法がないとのことです。23歳でストーマ(人工肛門)を造設されたのち、25歳でご結婚したとのこと。旦那さんとはどこで出会ったのでしょうか?

 

高橋さん:夫は一緒に看護を学んだ大学の同級生です。入学してすぐに女子7人、男子3人の仲のいいグループができて、夫はそのなかのひとりでした。私の持病であるクローン病は、炎症性腸疾患のひとつである難病です。症状は発熱、だるさ、下痢、腹痛などがあります。人によって症状はさまざまですが、私の場合、お尻にウミがたまり、皮膚を破ってトンネルのようなものができる「瘻管(ろうかん)」ができやすかったです。治療法がないため、子どものころは症状が出ると病院に1か月くらい入院し、鼻から栄養を入れて絶食していました。

 

私は大学に入学した当初、自分がクローン病だとは誰にも伝えていませんでした。大学入学当初は、まだストーマ(手術によっておなかに作る、便や尿の排泄口のこと。人工肛門とも呼ばれる) は造設していなくて、瘻管にたまったウミを、お尻から医療器具である管で取る「シートン療法」を行っていました。お尻からシートン療法のための管は出ていたのですが、周囲には病気のことを話しませんでした。洋服を着ていたら外見ではわからないし、病気があると話せば気をつかわせてしまうかもしれないからです。 

 

あるとき、みんなでバーベキューに行き、帰りに岩盤浴に寄ることになりました。裸になると、お尻に通った管が見えてしまいます。女子の友人には「じつはクローン病で、お尻に管が入っているけど気にしないで」と伝えたんです。その話が後に、友人経由で彼にも伝わったみたいです。

 

ありがたいことに、彼は入学してからずっと私に思いを寄せてくれていたらしくて…。看護科だったから基本的な病気の知識はあるうえに、自分でもいろいろと調べてくれたみたいです。その後、彼から告白されたので、交際が始まる前に病気についても伝えておかなくてはと思い、「じつは私、クローン病で…」という話をしたところ、「俺はもう全部わかっているから」という感じでした。最初から全部理解して、私のすべてを受け止めてくれました。

 

活発で元気のいい女の子だった

── 最初から高橋さんのことを理解し、受け止めてくれた旦那さんは素敵な人ですね。

 

高橋さん:じつは過去に別の方とおつき合いをしていたとき、たぶん「クローン病が理由で振られたんだろうな」ということがあって…けっこうトラウマになっていたんです。だから、夫が病気のことを受け入れてくれたのは本当にうれしかったです。

 

ストーマをまだ造設していなかったころ、一緒にドライブに行った際、車内で漏らしてしまったことがあったんです。私は何度かお尻の手術をしていて、お尻の筋肉がゆるんでいるんです。便を我慢できないことがあるから大急ぎで近くのコンビニなどを調べていたのですが、間に合わなくて…。彼氏の前で漏らすなんて、もう自分に絶望ですよね。でも彼は「換気すれば、ぜんぜん大丈夫!」って、おおらかに受け止めてくれました。

 

彼は現在、消化器外科の看護師をしています。私と同じようにストーマを造設する患者さんも来院される科です。おそらく、その進路を決めたのは私の病気のことが念頭にあったのではないかと感じています。

 

とはいえ、夫のご両親は私に持病があるのを心配していたみたいです。私が直接、何かを言われたわけではないのですが「持病のある彼女を、あなたが支えられるの?」という感じだったみたいで。心配になるご両親の気持ちはとてもよくわかります。でも、彼はそこではっきりと「彼女とつき合うことで苦労すると決めつけるな」と怒ったようです。彼がどれだけ本気なのかが伝わったらしく、それ以降は「何も言われなかった」と言っていました。

 

結婚が決まってからは、夫のご両親は私のことをとても大切にしてくださり、かわいがってもらっています。25歳で結婚したのは、30歳までに3人子どもが欲しかったというのが理由のひとつでした。夫も子どもを望んでいたのですが、なかなか授からなくて…。