オストメイトとして情報発信をするのが私の役割

── ストーマとはどんなものでしょうか?

 

高橋さん:手術によって腸の一部をお腹の外に出し、新しく排泄物の出口を作ることです。ストーマの位置は人によって異なりますが、私はお腹の左側にあります。ストーマから直接、排泄物が出てくることになるため、排泄物はストーマの上から腹部に装着させたパウチ(排泄物をためておく袋のこと)という袋にためます。もちろん、時間が経てばパウチは排泄物でいっぱいになるため、定期的に交換することになります。

 

高校生のころから医師には勧められてはいたのですが、イメージがつかないので怖くて、「絶対にイヤ」と拒否をしていたんです。でも、排泄コントロールが難しくなっていたことと、医師から「あなたはクローン病の影響でお尻にうみがたまりやすく、痔ろうが何度もできている。将来的に、痔瘻がんの可能性もある。排泄の際も自分の肛門を使うのではなく、ストーマのほうが身体に負担が少ない 」と言われて…。それに大学は看護科に進学したことで、私自身に病気の知識がつき受け入れやすくなったので、ストーマの造設(手術)に踏み切りました。

 

── ストーマを造設してから、生活に変化はありましたか?

 

高橋さん:お通じのコントロールがとても楽になりました。シートン療法だったときは、お尻に管が通っていて、清潔に保つ必要もあるから、排泄後はウォシュレットが必須でした。外出する際も、トイレにウォシュレットがあるかどうかがとても大事で…。もしなかったら汚れがきれいに取れないし、ウォシュレットのトイレがある場所しか行けなかったんです。

 

ストーマになってからは、トイレの心配はなくなりました。排泄物はストーマから勝手に出てきて腹部に取りつけているパウチにたまってくれます。たまったら自分で処理すればいいのでとても楽です。

 

とはいえ、大変なこともあります。パウチにたまった排泄物が漏れることがあるんです。いつ漏れるかわからないので、着替え用の下着はいつも持ち歩いています。睡眠中はリラックスしていることもあり、排泄物の量が増えてしまいます。だから、夜間は一度起きてパウチの様子を確認するよう心がけているのですが、深い眠りに入ると起きるのが難しいときがあって…。気づかず朝起きると漏れていて、布団が大変なことになっていることがあります。それでも、以前のように排泄に1日かけることもなく、生活はだいぶ改善されました。

 

最近はSNSでオストメイト(ストーマを造設した人のこと)の当事者として、情報を発信するようになりました。排泄の問題は人に言いづらいので、私が当事者として、顔出し・実名で発信していると周囲から驚かれることもあります。でも、ストーマに関することで悩んでいる人が私をみて、共感してくれたり、元気になってくれたらなと思います。また、オストメイトを知らなかった人にも「ストーマを造設していることは特別なことではない」と理解が深まっていったらうれしいです。

 

 

クローン病は命に別状がないとはいえ、排泄などの苦労は絶えません。高橋さんは20代のころ、彼氏とのドライブデート中に漏らしてしまったつらい過去があります。しかし、そんな彼女の姿を見て「全然、大丈夫」と軽やかに応じてくれた彼と25歳のときに結婚。今はお子さんにも恵まれ、幸せな生活を送っています。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/高橋めいこ