自分は成長してないのでは?人の役に立ってないのでは?と仕事に手応えを感じずに過ごすことは、誰にでも起こります。俳優の小沢真珠さんもそうでした。デビューして10年。名ドラマの快演が転機になり、モヤモヤが晴れたそうです。(全3回中の1回)
デビューするとオファーが殺到「力不足を実感」
── 数々のドラマで個性的な役を演じ、存在感を発揮する俳優の小沢真珠さん。芸能界入りはスカウトがきっかけだったそうですね。
小沢さん:初めてスカウトされたのは小学生のときでした。友達と原宿に遊びに行ったりすると、よく声をかけられていましたね。ただ小学生のときは、芸能界は遠い世界だと感じていたので、自分がまさかそこに入るとは思っていなくて。芸能界入りを本気で考えるようになったのは、高校生になってからでした。でも、うちは厳しかったので、スカウトをされたと言っても親はなかなか許してくれません。
もともとドラマ好きだったというのもあって、自分のなかには「芸能界=俳優さん」というイメージがありました。ドラマを見るにしても、自分がここにいたらどうなんだろう、と意識しながら見ていた気がします。当時とくにハマっていたのが『東京ラブストーリー』。ドラマに出てくるファッションをまねしたりしていましたね。

結局、「きっと最初は仕事がそんなにないだろうから学生生活も続けられるだろう」と両親が芸能界入りを許してくれて。高校2年生のときにデビューしました。ところが、ありがたいことにグラビアやCM、ドラマ出演と仕事が次々に決まり、学校に行けなくなってしまって。厳しい学校だったので芸能活動との両立は難しく、転校することになりました。
当時は本当に、自分でもびっくりするくらいお仕事をいただけたんです。でも、お芝居のレッスンは何もしていなかったから、実力が追いつかない。現場では力不足と監督さんに怒られるし、行きたくてもレッスンに行く時間はない。どうしたらいいかわからなくて、ずっと悩んでいました。憧れて芸能界入りしたものの、最初は楽しいというより「こんなに大変なんだ」という心境でした。
演じることの手応えを感じるのに10年かかった
── 演じることの悩みはいつごろ解消されたのでしょう。
小沢さん:10年以上悩みました。もうこのまま悩みが解消されることはないんじゃないか、俳優の仕事は私にはムリなんじゃないか、と思った時期もありました。お芝居が自分のなかでしっくりくることがなくて、「できた」という感触がつかめずにいたんです。ほかの素晴らしい俳優さんを見ては、どうしたらこういう風になれるんだろう、とずっと考え続けていました。
舞台に出演するようになったのも、いろいろチャレンジしてみようという模索の一貫でした。ドラマだと1回演じてOKが出ればそのシーンは終わりになるけれど、舞台は違います。毎日同じお芝居をしていても、お客さまからは毎回、違う反応が返ってきて、それがすごく新鮮でした。
『陽のあたる教室』という舞台で、初めてパワフルで変な踊りや歌を披露するエキセントリックな役に挑戦しました。それまでやったことがない役で、稽古中はもちろん、幕が上がってからも悩みまくりました。ただ、途中からお客さまが反応してくださるようになって、ようやく何かを掴めた感覚になったというか、お客さまとのキャッチボールがそこで初めてできた気がします。あとで聞いたのですが『牡丹と薔薇』のプロデューサーさんがその舞台を観に来てくださっていたそうで、その後の出演オファーにつながったそうです。