仕事復帰で子育てに葛藤「実母ならケンカしてたかも」

── 2007年には第1子となる女の子を出産されています。出産となると、仕事を休まないといけない時期があったと思いますが、そこに葛藤はありませんでしたか?
櫻井さん:結婚後も『おみやさん』シリーズは続いていましたし、『特命係長』シリーズもあったので、妊娠するタイミングについては漠然と考えていました。でも、たまたま両シリーズがお休みのときに妊娠をしたので、出産に関してはなんの問題もなかったんですけど、子どもを産んでからが大変でした。
── といいますと?
櫻井さん:これは世のお母さんはみなさん経験があることだと思いますが、まず自分の睡眠時間がとれない。それこそ家に帰ってから家事と育児をして、そこからセリフを覚えないといけないので、圧倒的に睡眠時間がたりていませんでした。だから、当時はちょっとした移動時間にも寝落ちしていたりして、どこででも寝られるようになっていました(笑)。でも、それ以上に悩んだのは、育児と仕事のバランスをどうとっていくのかです。
── 幼い子どもを置いて仕事に出かけるのはつらいものですよね。
櫻井さん:正直、赤ちゃんのときは誰に抱かれてようと、本人はわからないんですよ。私は母乳で育てていたので、母乳を冷凍しておいて、それを「お義母さん、お願いします」といった感じで夫の母に預けていたのですが、娘に物心がつき始めた2歳くらいから離れるのが大変で。しかも、私は毎週『おみやさん』の撮影で京都に行っていて、5日間は京都、2日間は東京という生活を送っていたんですね。なので、東京で娘と一日半過ごし、また京都に戻るという感じだったんです。別れのたびに本当に毎回大泣きされて、胸が引き裂かれるような思いでした。
── 物心がついてくると、どうしても「ママ、行かないで」となりますよね。
櫻井さん:そのころは「私はこのままシリーズを続けていていいのだろうか」と悩んでいましたし、葛藤し続けていました。あと、私が仕事で家を空けているからではありますが、自分の娘なのに彼女が笑顔を向けている先が私ではなく、義理の妹やお義母さんだったりしたときには、すごく落ち込みました。でも、それが義妹やお義母さんでよかったなと思うのです。もし自分の母親だったら「なんなのよ!」とケンカになっていたかもしれませんから(笑)。義妹と義母だったからこそ、よけいな気持ちが抑えられて、「娘の面倒を見てもらっているのだから、感謝しなくちゃ」という思いが生まれたように思います。
── でも、自分の娘が自分じゃない人に笑顔を向けているのを直視するのは悲しいですね。
櫻井さん:なので、娘を京都に連れて行っちゃいました。そこにも義母がついてきてくれて、私が仕事に行っているときは、娘は京都の保育園に通わせてもらい、その間の家事は義母がやってくれていました。夜寝るときには私と娘が同じ部屋で、義母は1人部屋という形でウイークリーマンションを借りていて、それでバランスを保ち始めたというところがありました。
── そういう環境が作れたのは、まさにお義母さんのおかげですね。
櫻井さん:そうなんです。義母を京都に連れて行くということは、義理の父を東京に1人置いていくことになるので。でも、みんなが「やっぱり母親と子どもは一緒にいなくちゃね」と言って協力してくれたので、それは今でも本当に感謝しています。
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俳優としてのキャリアが順調な中での結婚と出産。「夫の家族に本当に助けてもらった」と話す櫻井さんですが、子育ての悩みは次のステージへ。娘を大切に思うあまり、自分では気づかないうちに「過干渉」な母親になってしまっていたそうです。そのときも義母の助言でハッと自分の状況に気がつけたといいます。娘さんは今年で18歳。最近も母娘でディズニーシーに一緒に行くほど、今は本当にいい関係性が築けているそうです。
取材・文/馬場英美 写真提供/櫻井淳子