初めての挫折。幼稚園に通えず生み出したひとり遊び

── 4歳から2年間通う予定だった幼稚園にも1年しか通えなかったと伺いました。

 

鰻さん:地元の幼稚園に入る予定だったんですが、その年の年中クラスは定員越えだったとかで。クジ引きで入園者を決めたらしいんです。そのときに、おかんがクジを引いたら落ちたんですよ、僕だけ。一緒に遊んでいた近所の子たちはみんな幼稚園に通っているのに、僕ひとりだけ幼稚園に行けなくて、1年間めちゃくちゃヒマで。

 

── それは子ども心にショックだったでしょうね。

 

鰻さん:そうですね。1日じゅうほんまにやることなくて…。それで思いついたのが「1から1000まで全部言う」っていうひとり遊びです。1から1000までで言っていない数字をなくそうと、何かで見聞きしたり思いついた数字を声に出して言っていき、言った数字を紙に書くという。たとえば今、「864」って言うとしますよね。でもこの数字、僕1回言ったことあるんですよ。意味わかります?要は、自分の中でまだ言ってない数字をなくそうというわけです。

 

みなさんにとっては「503」って口に出していうのは初めてかもしれない。でも、僕にとってはもう言ったことがある数字なんです。こんなふうに淡々と口に出した数字をメモしていくんですけど、1年間幼稚園に行けなかったから、毎日ずっとやってました。

 

あと、両手を同時に出して、左手と右手、どっちが強いかを競う両手じゃんけんもしていました。どっちが勝ったかをメモっていくんです。

 

── 両手が器用になりそうですね。じゃんけんも強くなりそうな…?

 

鰻さん:残念ながら、それはなかったですね(笑)。あとは、両手でサイコロ遊びもするんですけど、左手で振ったサイコロの目が6とか、右手で振ったサイコロの目が4やったら、6と4で左手が勝って。それを繰り返して、合計でどっちが勝った数が多いかを競うんです。不思議と、最後のほうには左右両方の勝った数が平均になっていくんです。もうね、暇すぎたらこうなるんですよ。生まれて初めて味わった挫折ですね。だって、1年間、ずっとこうやってひとりで過ごしてたってことですから。

 

── そうだったんですね。年長さんで幼稚園に通い始めたときは楽しかったんだろうなと思いました。

 

鰻さん:それはもう、すごく楽しかったですね。バザーとかお遊戯会みたいな発表の場とか、もうすごく張りきってましたね。僕のアイデアが通って、じゃんけんゲームみたいなのを作った記憶もあります。