そんなに「子どもの初めて」を見ることって大事?

── そうだったんですね。NHKの番組で奥井さんの二拠点育児について取材を受けたとき、視聴者から厳しい意見もあったと伺いました。

 

奥井さん:NHKの『クローズアップ現代』で取り上げていただいたときに、当時シェアハウスの仲間に育児を手伝ってもらっていたんです。その映像を見た人から「子どもには母親がしっかりついてないとダメ」「やっぱり育児は母親だよね」というようなコメントが結構あったのは見かけました。

 

奥井奈々
むいちゃんをおんぶしてすっかり母の顔

── シェアハウスで育児していたんですか?

 

奥井さん:そうなんです。当時はシェアハウスの友達が育児をたくさん手伝ってくれて、助かりましたね。シェアハウスには若い人だけが住んでいると思われがちですが、上は50代から下は3歳まで幅広く、ファミリーも住んでいるんです。

 

── ユニークな環境ですね…!今は娘さんは三重の保育園に通っているそうですね。

 

奥井さん:そうですね。通っている保育園はすごく理解があって、基本的にママが仕事のときは東京にいると理解してくれていて。たまに私がお迎えに行くと「すごい、来てくれた!」みたいな(笑)。ただ、逆に母からチクチク言われることはあります。

 

──「子どもの成長の過程を見られない」という葛藤は、単身赴任中の親にありがちな思いかと思うのですが、奥井さんはその点はどうでしたか? 

 

奥井さん:私はあまりないですね。たとえば3、4日ぶりに娘に会うとめちゃくちゃ言葉が発達してることがあるんです。なので、逆に成長にすぐに気づける。そういう驚きや喜びのほうが大きいです。たしかに初めてハイハイした場面を私は見ていません。でも、夫から動画で送られてくるので、それで十分です。

 

── 割りきれているんですね。

 

奥井さん:そうですね。あと、「そんなに最初のシーンを見ることって大事かな」って思うんですよね。娘が初めてしゃべった言葉も「あし(足)」でしたし(笑)。「あし、かぁ。ママとかパパとかじゃないんだ」という。初めて歩いた、とかしゃべった、とかそういう初めてのシーンは見られなくても、娘が何かできるようになったという事実に違いはないので、そこを祝福したらいいんじゃないかなって思います。