ギャラ飲みで「NewsPicks」を初めて知って

── なかなか迷走していましたね…。

 

奥井さん:たしかにそうですね。でも、そのギャラ飲みの場で会った経営者のかたから、あるとき「最近どういうメディア見てるの?」って聞かれたことがあって。「YouTubeとか見ています」って答えたら、「NewsPicksって知ってる?」って教えてくれたんです。それをきっかけに興味をもち、調べていくうちに、NewsPicksの落合陽一さんの番組で、プロアナウンサーのオーディションがあることを知りました。それが今につながっているので、行動さえすれば、どんなきっかけからでも運はつかめるんだなって思います。

 

── ギャラ飲みが年収1000万円のアナウンサーになるきっかけだったとは…。ちなみに、もともとアナウンサーなど表に出る仕事への憧れはあったんですか?

 

奥井さん:いえ、むしろ自分はあんまり表に出るのが向いていないと思っていたんですよ。

 

奥井奈々
現在3歳の愛娘・むいちゃんと

── 学生時代も表に出るタイプではなかったんですか?

 

奥井さん:違いましたね。表に出る人って裏の顔があると思っていたんですよ。学校の人気者も見ていると結構、裏でしんどそうにしてるなって思ってて。学級委員の選挙とかも大変そうだったんですよ。「なんでみんな演技をしてまで、表に立ちたいんだろう」って不思議に思っていたほど。自分はそういう演技ができないという意味で、表には立てないな、と思っていたんです。

 

── 人気者を分析するタイプだったんですね。

 

奥井さん:そうですね(笑)。表に出る世界だと、どうしても表と裏の顔を使いわけないといけないじゃないですか。幼いころから、そういう落差がある人に近づきたくないって思っていたんです。自分は演技してまで人の注目を集めるなら、華々しい仕事はやらなくていいと思っていました。

 

── 今やアナウンサーとして活躍されていて、すごく華々しい印象です。

 

奥井さん:注目を集めるという意味ではそうかもしれないんですが、私としては、裏も表もまったく違いがないんです。NewsPicksは特殊な環境で「自由であり異端であれ」という考え方。アナウンサーオーディションでも、ありのままの私を撮ってくれました。それで「これでもいいんだったら自分も表に出られるかも」と思えたんです。ちょうどコロナ禍でYouTuberが台頭してきて、そのままの自分として発信する人が認められるようになりつつあったので、その波にうまくのれた部分もあるかもしれません。そういう意味では、時代の変わり目だったのも追い風になったと思います。

 

 

オーディションを勝ち抜き、見事NewsPicks初代キャスターとなった奥井さん。しかし、初の担当番組は4回で打ち切りになるなど、挫折の連絡だったそうです。無力感にさいなまれ、収録後に涙することもたびたびあったとか。そんな彼女が、堀江貴文さんらさまざまな共演者との出会いを経て見つけたのは、地道な努力を続けながらも、ありのままの自分を肯定する「整えすぎない」生き方だったそう。それが今でも奥井さんのモットーになっていると言います。

 

取材・文/市岡ひかり 写真提供/奥井奈々